身長が欲しいな
「もう少し身長が欲しいな」
角のとがったデビルの少女が言った。
「三食牛乳で」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「あーありかもな。珍しくまともな返しだな」
「しかし牛乳以外摂ってはダメ」
「がっかり。全然まともじゃない。狂ってやがる」
「狂い咲き! うおおお!」
「ヤバい。発言が狂い過ぎている」
「果たして発言だけで済むかな?」
「やめろやめろ。店のなかで何をする気だ」
「側転」
「出禁確定。つーか側転できないだろお前」
「半側転が関の山ね」
「何が半分なのだ。逆立ちで止めるのか?」
「逆にすごいわね」
「お前が言ったんだろ。なんの話だ」
「牛乳オンリー生活」
「だから却下だ。トイレが自室と化すだろ」
「やーい、トイレマーン!」
「小学生? お前もトイレ行くだろ」
「よくある論破ね」
「よくあるか? 私の身長の話だ」
「今さら伸びないでしょ。手遅れよ」
「冷たいこと言うなよ。そんなのは分かりきった上での話だ」
「もうあれね、角を伸ばすしかないわね」
「出た、角いじり」
「ノルマ達成」
「んなノルマないだろ。角の長さで身長を偽装しろと?」
「とりあえず2メートルぐらい追加しましょ」
「本体よりデカいだろ。角が本体だろそれもう」
「よっ、角の装飾品」
「誰が装飾品だ。その案も却下だ、アタシの尊厳が消え去る」
「もともとねえだろ」
「ひっぱたくぞ。身長だけでなくアタシは気も短いんだ」
「全然うまくない」
「飛んでけ」
二人は喫茶店をあとにした。