腹減ったな
「いやぁ、腹がへったな?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「え? さっき家でお菓子食べたけど?」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「それはお前だけだろ。私は朝から何も食ってないんだよ」
「なにやってんのよ。朝食はエルフの基本よ」
「いやアタシ、エルフじゃないんだけど。まあ、エルフに限らず重要なことだけどさ」
「そうなの?」
「そうだよ、重要だよ……食ってないアタシが言っても説得力ないけど」
「ホントよ。何で食べなかったのよ?」
「それはまあ、寝坊したせいでタイミング逃してうやむやになった感じでさ」
「あるある」
「おっ、やっぱあるよな?」
「いや、ないけど」
「何だよ! なにそのフェイント? 必要ねぇだろ今の?」
「いや、必要よ。朝食より必要よ」
「んなわけあるか。お前は朝食をなめすぎなんだよ……食ってないアタシが言っても説得力ないけど」
「ホントよ。何で食べなかったのよ?」
「それはまあ……ってループさすなや。メビウスの輪から抜け出せなくなるわ」
「そりゃ抜け出せないわよ、朝食食ってない奴じゃ」
「朝食関係ないだろ! というかなんだよメビウスの輪って!」
「それはあんたが言ったんでしょうが」
「冷静な突っ込みどうも。まあ、そういうことだから何か頼むわ」
「じゃあ私もパフェ頼も」
「まだ食うのかよ! 太るぞ!」
食事後、二人は喫茶店をあとにした。