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寝足りねぇな
「あー寝足りねぇな」
角のとがったデビルの少女が言った。
「じゃずっと寝てろや」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「息絶えろと申すのか？」
「お望みとあらば」
「ふざけんな。誰も望んでないだろ」
「世界中の人が望んでなくても、私が望んでる」
「最悪。世界一カッコ悪いよお前」
「カッコ悪さがカッコいい的な？」
「いやカッコ悪いだけだろ。変なキャッチコピーでごまかすな」
「まああんたに消えられたら困るからね」
「具体的にどこが？」
「ツケがあるから」
「ツケ？ なんかあったっけ？」
「ん？ なんかあったツケ？」
「うぜぇ。なんもないなら言うなや、くだらなすぎだろ」
「くだらないことが何よりも大切だった」
「何の歌詞だよ。なんかありそうだけど」
「歌詞といえばね」
「ええ！ そこから話題振るの？ あたしの寝不足トークは？」
「何よ、寝不足トークって。どうせ中身ないでしょ」
「ねぇよ」
「潔し。たぶん今のあんたが一生で一番カッコよかった」
「なんであたしの一生のベスト1決めちゃうんだよ。この先もっとカッコいいシーンあるかも知れないだろ」
「多分ないと思いますよ」
「くそぅ……もうあれしかないな」
「あれとは？」
「ふて寝する！」
「お休みなさい。また来世で」
「永眠させるな」
二人は喫茶店をあとにした。
