なんか臭わね?
「なんか臭くねぇか?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「ああくせぇ。まったく青臭いよ、私は」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「急な自虐イズ何? 誰もお前の未熟さについて言及しとらんが」
「まあ、あんたに比べりゃ青くないはね」
「出たよマウント。すーぐマウントとるなお前は。マウントゴリラかよ」
「なにその新種のゴリラは。バナナの大食いで優劣つけてきそうね」
「知るかよ。バナナの食いすぎで昇天しろ」
「そんな最期は嫌すぎでしょ。せめてバナナパフェで」
「ひと手間加えたら、死んでもいいのかよ。つーかなんの話だ」
「青いっていう話。空が」
「空じゃねぇよ。空は何で青いんですかって科学者に質問するか?」
「何その夏休みのお楽しみみたいなのは」
「科学者も夏休みにさせてやれよ……何の話だ」
「臭うって話でしょ。あんたが」
「アタシじゃねぇよ。この席の周りがだよ」
「クレーム? あんたも焼きが回ったわね」
「焼きっつうか臭いが回ってるな。特にお前の方から」
「まあ香水付けてるからね」
「は? 何のだよ?」
「バナナ」
「まーたバナナだよ。もういいよ」
「まさにバナナ回ってやつね」
「店員さーん、こいつ出禁で」
二人は喫茶店をあとにした。