改名したいね
「そろそろ改名を視野に入れる時期かな」
角のとがったデビルの少女が言った。
「いや、他に目に入れるもんあんだろ」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「他に? 何よ?」
「……鱗」
「出るやつ! それ目から出るやつだろ」
「目から鱗なんか出ねーよ」
「実際はな? それぐらい分かるわ」
「マジ? 目から鱗だわ」
「あーウザいウザい。もー変な返しするから、冒頭のアタシのフリのインパクト帳消しでしょ」
「インパクト? あー解明がどうのこうの」
「いや違う。何を解き明かしたいんだアタシは。改名だよ」
「改名つーか、そもそもあんたの名前って何よ?」
「……確かに」
「納得しちゃった」
「いやその通りだ。改名以前に名前をつけないと」
「改名前提なのがもうぐちゃぐちゃな感じだけど」
「アタシの名前……何がいい?」
「聞くの!? 私がつけんのかい」
「いいのを頼む」
「拒否権はいずこへ……えーじゃあ」
「ワクワク!」
「ジャスミン」
「どっから出た? どういう経緯でそこに着陸したのだ」
「なんか当たり障りないかなと思って」
「当たり障りはないが、意味がわからん」
「そうね、なんか違ったわ。何がジャスミンよ」
「おい、ジャスミンのこと悪く言うなよ」
「ティーでしょ。お茶にされて飲まれるのがオチね」
「と、ということは?」
「すいませーん! ジャスミンティー1つ!」
「改名は? そしてアタシの分がないというね」
二人は喫茶店をあとにした。