髪切られすぎてさ
「この前、理髪店で髪切られすぎてさ」
角のとがったデビルの少女が言った。
「切られすぎるお前にも問題があるな」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「なにその、客観視できてる感出した返答」
「お前にも、ってとこがポイントね。中立感出して、どっちに転んでも損しないようにしてる」
「きたねー。一番やなタイプじゃん」
「中立こそ真理よ」
「何の話だ。あたしの髪の話はどこへやら」
「何の話だっけ?」
「便利な記憶喪失キャラだな。思ってたより切られたって話だよ」
「予想を上回る散髪量。手練れね」
「いや、量切れればいい訳じゃないだろ。そんなんならバリカン最強じゃん」
「もうバリカン買えば、自宅で済むわね」
「アタシを野球少年にするんじゃないよ」
「どうせベンチだろ」
「ふざけんな。エースで4番だよ」
「黙れ3軍。キックベースでもやってろ」
「キックベースとか久しぶりに聞いたわ。やりてぇな」
「髪の話は?」
「あ? もういいいよ。お前に愚痴ってたらどうでもよくなった」
「そりゃどういたしまして。今後も、髪の毛切られ過ぎた際は遠慮なく愚痴ってね」
「いや、ケースが限定的過ぎるだろ。つーか、そんな頻繁に切られ過ぎてたまるか」
二人は喫茶店をあとにした。