大食いにさ
「実はアタシ、大食いなんだよね」
角のとがったデビルの少女が言った。
「ミートゥー」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「グローバル。急にグローバルに返したな」
「いや違、ディファレンスね。ユーより食えるネ」
「どこ出身だよ。何、ハーフなの?」
「ハーフアンドハーフね」
「急にピザ。この食いしん坊が」
「あーピサ食いたいわね。ピザ屋行ってピザ食べない?」
「ピザピザうるせぇ奴だな」
「ピザって10回言って」
「ヒジ」
「おいめんどくさいからってオチまですっ飛ばさないでちょうだい」
「黙れ。ピザの連呼で文字数を稼ぐな」
「ちっ、お見通しか。賢しい奴め」
「なんでピザをフューチャーした話してるんだよ。アタシが大食いって話だろ」
「あんた程度で大食いを名乗るとは片腹痛いわね」
「お前誰だよ。アタシより食わないだろ」
「いや、カレールー三杯はいけるね」
「ルーだけ? 逆にすげぇわ。喉ヒリヒリなるだろ」
「ホントよ。せっかくの美声が台無しよ」
「美声? お前の耳大丈夫か?」
「耳までヒリついてないわよ」
「そうでなくてだな……まあいいか」
「よくねーだろ。声の仕事できなくなるでしょ」
「知るかよ。お前が勝手に飲んだんだろ」
「ホントよ。声を犠牲に"肥え"てどうするのよ!」
「……」
「……」
「……満足か」
「ごちそう様でした」
二人は喫茶店をあとにした。