星をつかみたいな
「一度でいいから、星をつかみたいな」
角のとがったデビルの少女が言った。
「難しいわね。お星様にはしてあげられるけど」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「さらっとアタシを亡き者にしようとするな」
「いや生き続けるさ。私の心のなかで」
「死んだやつ。それ死んだやつに向ける言葉でしょ」
「まあ、ぶっちゃけ意味わからないわよね。心の中で生きるってどういうことよ?」
「やめろやめろ、敵を作る発言は控えてくれ。アタシに飛び火するだろ」
「むしろあんたに集中放火でしょ」
「なんでやねん。対象をすり替えるな、なんでアタシが丸焼けなんだよ」
「大丈夫、心の中で生き続けるから」
「ふざけるな。お前の心で寝泊まりなぞ誰がするか」
「当たり前だでしょ。私の心はVIPルームよ、あんたごとき通さないわ」
「お高いやつめ。小心者のクソ狭い心なぞこっちから願い下げだ」
「誰が小心者だ。態度はでかいわよ」
「なにも反論になってないが」
「欲しいわねでかい心が。お星様に願おうかしら」
「しかたないな。私がとってきてやるよ」
「いや、勝手に獲るんじゃないわよ。法に触れるわよ」
「そんな法あったか? 星の前に私が警察に首根っこつかまれるのはごめんだぞ」
「何を言ってるの。星だって生きてるのよ!」
「いやさっき亡き者扱いしてたじゃん」
二人は喫茶店をあとにした。