ソフトクリームをさ
「寒い時期に食うソフトクリームもオツだよな」
角のとがったデビルの少女が言った。
「ああ? 生ぬるいんだよ、かき氷ぐらい食ってみろや」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「すげー喧嘩腰の人来たよ。かき氷は流石に寒いだろ」
「そこで寒がるようじゃまだまだね」
「お前は食えんのかよ?」
「んー溶かせばね」
「くだらねぇ。お前の方が生ぬるいだろ」
「ああ、氷を溶かすって意味で?」
「別にそういう意味はねぇよ。寒い日にあえて冷たいもん食うのもいいなって話よ」
「いわゆるひとつの逆張りって奴ね」
「なんか印象悪い言い方するな。とにかく暑い日に食べるのとは違った感じになるんだよ」
「なるほど。その考え方は逆でも活かせるわね」
「どういうことよ?」
「暑い日に熱いもんを食うのよ」
「ほう、そっちはあんまやったことないな。例えば何よ?」
「ドリア」
「あーいいね。うまそうだ」
「あとは、リゾット」
「あーそれも食いたいね」
「そして、雑炊」
「米。米にひと手間加えたのしか挙がらないな」
「ああ? じゃあ他になにがあんのよ?」
「おでんとか?」
「おでんごはん?」
「米を入れるな。どんだけ米食いたいんだ」
「炭水化物は肥満のお供よ。気を付けなさい」
「お前だろ。勝手に太ってろよ」
「太れば寒さ知らず。冬でもかき氷ぐらいワケないわね」
「まだ食うのかよ。もうオツでもなんでもねぇ」
二人は喫茶店をあとにした。