ハロウィンだな
「もうすぐハロウィンだな」
角のとがったデビルの少女が言った。
「おっ、メリークリスマスね」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「いや、ハロウィンだっつてんだろ。話を聞け」
「ごめん。私、メリークリスマス派なのよね」
「どんな派閥? というか、クリスマスでいいよ。メリーつけなくていいだろ」
「なんでも短縮すればいいってもんじゃないわよ」
「短縮はしてねぇよ。メリークリスマスは挨拶だろ」
「豆知識ね。為になったでしょ?」
「お前がな。ハロウィンの話をさせろ」
「ハロウィンといえばあれでしょ、カボチャでしょ」
「ああ、そうだよ。カボチャに顔の加工を施すんだよ」
「言い方。まあ、間違ってはないわね」
「あと、ハロウィンといえばあれだな」
「ジャック・オー・ランタンでしょ」
「それカボチャじゃん。まだカボチャの話するか?」
「いうて、カボチャ以外ないでしょ話題?」
「あるだろほら、トリックオア」
「パンプキン?」
「うーん。悪くないけど、飴とかの方が万人受けしないか?」
「そうね。特に世の中の世知辛さを知らないお子様とかね」
「何でキッズにマウントとった?」
「キッズぐらいしかマウントとれないでしょ」
「エルフのクズ。お前なんがトリック一択だ」
二人は喫茶店をあとにした。