ミュージカル観賞をさ
「突然だが、ミュージカル観賞が趣味ってカッコよくない?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「え? 私のこと?」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「え? お前の趣味そうなの?」
「いや全然」
「ぶっ飛ばすぞ? お前がミュージカルに興味あるそぶりなぞ見たことがないわ」
「まあ、そうでしょうね。あんたの観測下では」
「ムカつくね。じゃあオススメの奴教えてみろよ」
「デビルと三匹の子豚」
「ぜってぇねぇだろそんな演目。デビルのノイズ感よ。子豚三匹で成立するだろ」
「いや、デビルがいることでストーリーに深みが増してるから」
「マジかよ。デビルの立ち位置はどんなよ?」
「ストーリーテラー」
「まさかの天の声。デビルじゃなくても成立するじゃん」
「いや、そこをデビルにすることで演目に深みが増すのよ」
「増さねぇよ。デビルにそんな濃度ないよ」
「けっ、薄味アピールかよ!」
「どゆこと? 何もアピール材料ないだろ」
「しっかりしなさい。そんなんじゃ演者に採用されないわよ」
「されんでええわ。違うから、観賞する側になりたいんだよ」
「ああ、自称ミュージカル評論家みたいな?」
「……まとめ方に悪意がすさまじいが、まあそんなとこかな」
「いいじゃないの。では早速、レビューしてもらいましょうか」
「は? 何を?」
「デビルと三匹の子豚」
「星1、ゴミ」
二人は喫茶店をあとにした。