やきそば食べてぇ
「うわーなんか、焼きそば食いてぇな」
角のとがったデビルの少女が言った。
「じゃなんで喫茶店来たぁ?」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「そう言われても、この形式でずっとやって来てるからね」
「形式言うなよ。別に焼きそば屋スタートでもいいじゃないの」
「いや、そこは譲れないね。ここは貫いていきたい所存」
「新しい風もときには必要よ」
「それは一理ある。だが変えるなら別の箇所を変えないか?」
「どこよ? メニューに焼きそば追加しろとでも」
「いやいや、そんなクレーマーじみたことせんよ。そうだな……種族を変えてみるか」
「焼きそばどこ行った」
「焼きそばはもういいいや。アタシらの種族を変えれば新しき風もお迎えできるのでわ?」
「はぁ。じゃあ私は……ゾンビ」
「コアだな、いきなり。まあ、パンチはあるが」
「そう言うアンタは何よ? アンデッド?」
「同じじゃね? 死者と死者で何を話せと?」
「共通の話題とか。死臭ヤバいよね~とか」
「どんなんだよ。あんまりファンタジーで死臭は触れないだろ。リアルすぎるわ」
「リアリティー重視路線で行きましょう」
「どんな路線だ。ただちに路線変更していただきたい」
「まったく、変えたいのか変えたいのかどっちなんだか」
「さあね。今は、新しい風よりもソースの香りを浴びたいよ」
「はよ、焼きそば屋行けや」
二人は喫茶店をあとにした。