キーホルダーをさ
「ほら。お土産のキーホルダーやるよ」
角のとがったデビルの少女が言った。
「施しは受けん」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「今の断り方、全世界お土産拒否選手権優勝だな」
「ありがとうございます。優勝賞品はキーホルダー以外でお願いします」
「どんだけだ。どんだけキーホルダー嫌なんだよ」
「いや悪いけど、あんたのお土産のキーホルダー率とんでもないのよ。もうつけるキーが不足してるのよ」
「そんな渡してったけ? ……まあ基本、お土産はキーホルダーな気がするが」
「いやだってこの前のもすごかったじゃん、オーガの角キーホルダー」
「ああ、あれか。すごいインパクトあったよな」
「いや、インパクトしかなかったけど。もうあれどっちかっていうと角が本体だし。鍵が角ホルダー状態になってたのよ」
「ああ、確かに実際使うとそうなるな。でもあれとかよかったんじゃないか、鍵のキーホルダー」
「いや全然よくない。いかんせん鍵のデザインが私の自宅の鍵に似すぎてる。何回か開けるとき間違えたから」
「そりゃお前ん家の鍵が似てたのが悪いだろ。アタシゃ悪くないわい」
「いや、ワンチャン間際らしいデザインのキーホルダーをプレゼントしなや。むしろ逆にあんたのキーホルダーへの執着はなんなのよ」
「あ? そんなんあれよ。手頃で持って帰りやすいだろ」
「ああ。貰う側が?」
「いや、アタシが」
「お前かよ」
二人は喫茶店をあとにした。