うろ覚えでさ
「あーアレなんだっけ?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「……タケノコご飯」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「いや、違うね。つーか当てるの無理だろ、この情報だけじゃ」
「ホントよ。クソクエスチョンもいいところだわ」
「誰も出題はしていないのだが……アレだよ駅のパスタ屋の名前だよ」
「あーパスタね。惜しいわね」
「惜しかねーだろ、タケノコご飯は」
「タケノコパスタ専門店だっけ?」
「無理やりニアミスに仕立て上げるな。なんだその専門性の高すぎる店は」
「うちのメニューは一品だけだぜ、的な」
「尖りすぎだろ。ある意味隙間産業でやってけるかもしれんが」
「まあ、私はキノコ派だけどね」
「知らねぇよお前の派閥なんざ。つーかパスタ屋の名前だよ、なんだったっけ?」
「パスタのパス屋」
「パスとかやめろ、演技でもない。客がスルーする感出ちゃってるじゃん」
「いやこう、次世代へ伝統と技術をパスしていく的な意味で」
「ポジティブが回りくどいわ。てか絶対違うし」
「そうねーじゃあ……」
「いやいや、大喜利じゃないから。パスタ屋の名前、お前覚えてないの?」
「いや、覚えてるけど」
「なんだよ。じゃ、教えてくれよ」
「バンブーシュート」
「結局タケノコなのかよ」
二人は喫茶店をあとにした。