鍵なくしてさ
「まずいな。鍵なくしたわ」
角のとがったデビルの少女が言った。
「窓割って入るしかないわね」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「具体的ぃ……具体的な解決法じゃん」
「ダメかしら?」
「もうちょっと、尖った返しが欲しかったな」
「じゃあ……野宿に切り替えるしかないわね」
「諦めたよ! 諦めちゃったよ! 何も解決しないじゃん」
「尖ってたでしょ?」
「尖ってるだけだろ。つーかマジでどうしよう? 家入れねぇじゃん」
「すぐそこのデカい雑貨屋に寝袋くらい売ってんじゃない?」
「野宿確定で話が進行してしまっているな。もうちょっと足掻かしてくれ」
「足掻く暇があるなら鍵を探しなさいな。どこかで落としたんじゃない?」
「んー……家を出てからカバンをいじった場所といえば……」
「ああ、アタシん家に寄ったわね」
「そうだ。お前ん家寄ったわ」
「友人を疑う気か?」
「何でよ。別に泥棒扱いはしてないだろ」
「見損なったわ。あんたとはここまでね」
「知らんがな。どこまででもいいよ、早くお前ん家に戻ろうぜ」
「いや、それは無理ね」
「は? 何でよ?」
「私も、家の鍵なくしたから」
「えぇ……」
二人は喫茶店をあとにした。
(このあと二人の鍵は無事見つかった)