トランプしようぜ
「暇だな、トランプするか」
角のとがったデビルの少女が言った。
「喫茶店でトランプ広げるってどうなのよ」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「正論。久しぶりに正論なツッコミきたね」
「常識は破るものじゃなく乗りこなすものよ」
「なーにをそれっぽいことを。まあ、ジョークだけどな」
「嘘を嘘で塗りかため始めたらおしまいよ」
「重っ。そんな大罪かい?」
「まあ、ジョークだけどね」
「うぜー。お前も同罪だ、署までご同行願おうか」
「まあまあ、そんなカリカリしなさんな。気晴らしにトランプでもやろう」
「だからできない言うたやん。何? 脳内でやるつもりか?」
「それいいわね。じゃあなんのルールにする?」
「何もよくないが……えーババ抜きとか?」
「誰がババアじゃ。ひっぱたくぞ」
「ベタぁ。往年のギャグじゃん」
「温故知新」
「そのまま過去に囚われていろ。老人が」
「まあ、物は試しね。脳内でシャッフルしてちょうだい」
「ああ? ……はい、しましたよ」
「配って」
「……はい」
「なにこれ?」
「知るか! 脳内トランプなんてできるかよ!」
「あんたが言ったんじゃないのよ。責任を貫き通して」
「もういい、アタシが悪かった。今後は自分の発言に責任をもつよ」
「……」
「ちょ、なんとか言えよ」
「いや今、脳内で「気にするな」って言った」
「気に入ってんじゃねぇよ」
二人は喫茶店をあとにした。