闘牛をさ
「人生で一回は闘牛やってみてぇな」
角のとがったデビルの少女が言った。
「牛役? まあ、角生えてるしね」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「よし、赤い服に着替えろ。突き飛ばしてやる」
「それ結局回避されるやつでしょ」
「ああそうか、じゃあダメだ。無条件で突き飛ばしてやる」
「闘牛要素はどこへ?」
「内なる闘争本能の解放は誰にもとめられないのさ」
「ヤバすぎだろ。警察呼ばなきゃ」
「そうだな」
「あんたでしょ。まったく、相変わらず突拍子のない話題ふりするわね」
「いいじゃないか。闘牛、面白そうだろ」
「いや全然。むしろ危なそうでやりたくないです」
「逃げるのか? 闘牛の牛は逃げずに立ち向かってるぞ」
「いいわよ、無理やりそこに結びつけなくて」
「まあ、そこらへんのスリルも込みでロマンがあるな」
「ロマンで怪我しちゃ世話ないわね」
「そういうもんか? しかしまあ、なぜ赤い布に反応するのだろうか?」
「そりゃあんた赤色といえばあれでしょ」
「ハート」
「乙女。随分と乙女チック」
「ほら、グロテスクな表現は回避しないとさ」
「あー。血=血管=心臓ってことね」
「解説どうも。おかげ様であたしの神回避が台無しだ」
「当然。闘牛みたく簡単には回避させないわよ」
「……お前も結びつけてんじゃんよ」
二人は喫茶店をあとにした。