バードウォッチングをさ
「バードウォッチングしたくね?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「横文字使えばいいと思ってるだろ」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「そこで突っかかられるとは。翻訳しろと?」
「鳥ウォッチングて言えよ」
「半端。横文字がバード三文字しか消せてない、だいぶ横文字残ってるけど」
「私の学じゃ、これが関の山よ」
「何を偉そうに。じゃあまあ改めて……鳥ウォッチング行きたくね?」
「何それ? 頭大丈夫?」
「大丈夫じゃないね、堪忍袋の緒が。ブチ切れてここら一帯焦土と化しそうだね」
「ヤバ! 逃げなきゃ」
「させるか! 堪忍袋の緒!」
「ぐわぁ! 緒が足に巻き付いて動けない!」
「何してんの?」
「ホントよ。で、なんだっけ?」
「鳥……バードウォッチングだよ」
「見ればいいんじゃないの? すぐそこの公園にハトいたわよ」
「ハトはいつでも見れるだろ。もっと珍しい鳥が見たい」
「じゃあすぐそこの居酒屋で」
「まさかの焼き鳥! 鳥見たいつって焼き鳥を挙げるお前の方が珍しいわ」
「花より団子。鳥より鶏肉よ」
「肉食系が。肉ばっか食って栄養片寄ってしまえ」
「大丈夫よ。ここ数日サラダしか食べてないから」
「それはそれで大丈夫じゃないだろ。まあいいや、来週の休みまでにツアー調べとくか」
「え? サラダツアー?」
「違う! バードウォッチングツアーだ!」
「横文字が長すぎる。気分は海外旅行ね」
「アホか。サラダウォッチングでもしてろ」
二人は喫茶店をあとにした。