聖剣買ってみたんだが
「そういえば、聖剣買ったんだけど」
角のとがったデビルの少女が言った。
「そういえばで始める話題じゃねぇだろ」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「バカお前、本物じゃねぇよ。おもちゃだよ」
「この嘘つきが。泥棒のはじまりはじまり~」
「なんぞ?」
「こっちの台詞よ。なんで聖剣の見た目したゴミを買ってんのよ」
「ゴミ言うなや。いやすごくないかこの造形、本物と遜色ないだろ」
「本物の聖剣見たことあんの?」
「ねぇよ。あるわけねぇだろ」
「また嘘つきか。泥棒のはじまりはじまり~」
「それはもういいよ。何、気に入ってんのかそのネタ?」
「いや、そんなに。なんか自分の中でもしっくり来てない」
「じゃなおさらやらんでええわ。まあ、本物は見たことないが、イメージでだよ」
「ふーん。確かに精巧なつくりしてるわね」
「だろ。一家に一本あっても困らんだろ」
「聖剣を量産しすぎだろ。ありがたみたくなるわ」
「それもそうだな。しかし、聖剣ってどのあたりが聖なんだ?」
「急に難しい疑問を抱くな。それこそイメージでしょ」
「聖っぽいイメージか。うーんいまいちつかみきれんな」
「例えばほら、目の前の奴とかね」
「目の前?」
「そう、エルフとかね」
「……それは妖精のセイだろ」
「セイ解!」
「うぜぇ……いや、うるセイ」
二人は喫茶店をあとにした。