自然派になりたいな
「自然派に憧れるんだが」
角のとがったデビルの少女が言った。
「派閥争いは悲しみしか生まないわよ」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「派閥? もうひとつは何派なんだ」
「頭脳派」
「おい。自然派を相対的にアホ扱いするなよ」
「なんだとこの自然野郎」
「隠語。自然がアホの隠語になってる」
「包み隠さず堂々としろよ!」
「お前がな。何の話だ」
「まあ、自然派のことなら自然代表のエルフに任せてちょうだい」
「いつ代表に選出されたのだ。確かに自然なイメージあるけど」
「いやもう自然も自然。自然過ぎてエルフなのか自然なのか分からない感じだから」
「自然自然うるせぇな。具体的にどこが自然なのだ?」
「そりゃこう話してる間に、頼んだアイスコーヒー一杯飲み干してるし」
「自然。自然に飲み干してるな」
「でしょ?」
「……いやそういう自然じゃないだろ。エルフ関係ないし」
「じゃ、どういう自然よ?」
「なんかこう、環境に優しい的な?」
「フワフワやね。発言が無重力ね」
「いいだろ別に。環境に気を使うに越したことはないだろ」
「いや環境より私に気を使ってくれ」
「は? なんでお前?」
「急に腹の調子が……ね」
「……アイスコーヒー、一気飲みするからだろ」
二人は喫茶店をあとにした。