白髪がさ
「あ、これ白髪じゃね?」
角のとがったデビルの少女が言った。
「なぜ一本だけ染めてるのだ。理解に苦しむ」
耳のとがったエルフの少女が言った。
港町の喫茶店に二人の姿はあった。
「勝手に苦しめ。てか、染めてないわい」
「うそよ。勝手に白くなるとでも?」
「別になるだろ。老化とかストレスで」
「悲しすぎる二択ね……あんたはどっちなのよ?」
「知るかよ。こっちが聞きたいわ」
「ここは間をとって両方で」
「とってないだろ。二兎を追うな、得しないぞ」
「この選択に関してはどちらも得しないでしょ」
「そりゃそうだ。まあ、ストレスの方がましか」
「いや、能天気なあんたにストレスなんざないでしょ」
「あーストレス。今の発言で+1ストレスだわ」
「アホデビル」
「+10ストレス」
「ボケデビル」
「+5ストレス」
「なんでボケがアホの半数なのよ。判定基準が意味不明すぎる」
「おいどうするよ? 合計16ストレスだぞ」
「16だったら何のよ。半端もいいところよ」
「20たまったら……大変なことになる!」
「アホデビル」
「26ストレス! 最短で稼いだねぇ。話聞いてた?」
「うん。20たまると賞金が貰える」
「してないねぇそんな話は。大変なことになるっつたんだよ」
「何よ、それは?」
「んー……なんだろ?」
「自分の発言に責任を持ってください」
「すまんすまん。ふぅー……しかしあれだな」
「何よ?」
「えーと……あれ? 何言おうとしたんだっけ?」
「……」
「……」
「……やっぱ老化でしょ」
「……正解」
二人は喫茶店をあとにした。