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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
統一

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贈り物

真田幸隆「戦況に変化が見られた模様であります。」

私(村上義清)「攻めあぐねておるのか。」

真田幸隆「はい。城攻めの方法が崖をよじ登ることしかないところに大量の種子島が降り注がれるのでありますから……。」

私(村上義清)「岩でも十分……。」

真田幸隆「いえ。ああ言う時、意外に敵が嫌がるのはお粥ですよ。」

私(村上義清)「粥って、あの体調崩した時に食べる。」

真田幸隆「えぇ。からだにやさしいあのお粥であります。」

私(村上義清)「どう使うの?」

真田幸隆「普通に柄杓ですくって登って来る敵にかけるだけですよ。勿論熱々にしたものであります。あれ喰らうと大変ですよ。鎧とか着物の中に潜り込んで来ますからね。しかもお粥は岩を落とす時のような力を必要としませんし、種子島のように専門知識が無くても出来ます。熱して柄杓ですくって撒くだけですので。欠点を挙げるとすれば兵糧を使ってしまうところでしょうか。」

私(村上義清)「……苦労してるんだね。」

真田幸隆「その原因を作った一人が殿ですよ。」


 正しくは先代の村上義清。


私(村上義清)「そうなると力攻めはもう……。」

真田幸隆「周りを取り囲むことにより、孤立させようとしたのでありましたが、城の北側はまだ憲政の勢力圏でありますので完全に囲うことは出来ません。そこに景虎より北条高広が一軍を率いて上野に入り。更には越後から救援物資が無尽蔵に入って来ます。兵糧攻めは通用しません。」

私(村上義清)「でもそれしかやることないよな……。」

真田幸隆「雪で越後から上野に越えることが出来なくなるまで辛抱……。」

私(村上義清)「ただ雪以外邪魔することが出来ないとなると、幾らでも備蓄用を送り込むことが出来る……。」


 戦線は膠着状態に陥るのでありました。長尾景虎の先遣部隊により、これまで快進撃を続けて来た北条氏康の手が止まる。景虎は上野には居ない。本隊はこれからやって来る。それどころか景虎は越後にすらまだいない。京の都に滞在している。と言うことは、景虎から北条高広に細かな指示が飛んでいるわけではない。一人の家臣の裁量によって、あの北条氏康が翻弄されている。この様子に不安を覚えたのが……。


真田幸隆「上野北部で憲政に帰順を申し出るものが続々と……。」

私(村上義清)「まぁ関東公方の要請とは言え、裏で糸を引いている北条氏康のことを良くは思っていないだろうからな……。ところで業正は?」

真田幸隆「(長野業正が束ねる)箕輪衆に動きは見られませぬ。」

私(村上義清)「……そうか……。で。帰順を申し出て来たものに対し、北条高広はどうしている。」

真田幸隆「はい。憲政の名の下、認めています。ただ彼らに対しこのようなものが……。」


 帰順を申し出た勢力に対し、種子島と玉薬を送り付ける北条高広。


私(村上義清)「どういう意味?」

真田幸隆「カネでは無く、(軍事)行動で以て忠誠を示せ。とのことだと思われます。」

私(村上義清)「『(高価な銃火器を)これぐらいくれてやっても構わないよ。別にお前のとこに渡してもうちはびくともしませんよ。なんならそれ使ってこっちに向かって来てもいいですよ。返り討ちにしてやるだけですから。……どうします。それを何に用いますか?』……脅し以外の何ものでもないな……。」

真田幸隆「殿も同様の手法を採ってみましては?」

私(村上義清)「……持ち帰りまして検討させていただきます……。」

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