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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
統一

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露払い

 その頃、長尾景虎が京から仕入れた大量の種子島と玉薬の一部が山を越え、山内上杉憲政が籠る沼田城に景虎の家臣、北条高広と共に運び込まれたのでありました。沼田城は、高さ70mにも及ぶ崖のみならず東西南北の内、北を除く三方が川に守られた要害。その三方向からでしか攻めることが出来ない北条氏康にとってこの城は、ただでさえ厄介な代物であるところに遠くから狙うことの出来る未知なる兵器種子島が到来。


春日虎綱「なぜ北条(高広)を?」

真田幸隆「まず言えるのは種子島を使いこなすことが出来る人員を確保しなければならないので。」

私(村上義清)「下手すると暴発するし、弾が無くなったら何にも使えない武器なんでね……。」

春日虎綱「それでうち(昔の勤め先である武田)とのいくさの時、殿は醜態を晒すことになったんですね。」

私(村上義清)「……かさぶたを剝がそうとしないでくれる……。」

真田幸隆「それに湿気などに弱いため、管理出来る人間も居ないとなりませんので。」

私(村上義清)「ほかに言えることとなると……険しい山道とは言え、今は上野と越後を行き来することが出来てはいるけれども、もう少しすると雪が降って来る。そうなってしまうと人も物も動かすことが出来ない。全て自弁でやりくりしなければならなくなる。今、憲政が上野の中で補給することが出来る場所は沼田の城にあるもののみ。それだけでは雪が融けるまでの間、氏康の攻撃を凌ぎ切ることは不可能。景虎はまだ京に居る。越後の本隊が上野に入るのは難しい。もしかすると来年になってしまうかもしれない。それならば北条高広を送り込んで失地回復を狙おうでは無いか。」

春日虎綱「……となりますと北条(高広)も……。」

真田幸隆「憲政同様、冬に越後からの補給を期待することが出来ないから必死にならざるを得なくなります。」

私(村上義清)「籠っているのが、景虎が継ぐことになった関東管領の憲政であることを考えると北条(高広)の役割は、単なる『軍目付では無い』と言うこと。」

真田幸隆「沼田城の守りは勿論のこと。自活することが出来るよう少なくとも上野北部の奪還を求められていると思われます。」

私(村上義清)「出来れば裏切り者の業正の駆逐。更に南進し、氏康を武蔵に追いやることが出来れば。と言うところになるのかな。」

真田幸隆「景虎から『関東管領として入る私と、先代の山内上杉憲政様に迷惑を掛けぬよう抜かりなく準備をしておいてくれ。』と言ったところでしょうか。」


 北条高広が報われる日は、……来るのでしょうか……。

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