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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
統一

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喧嘩せず

 越後より麻織物の原料となる青苧が届く。


私(村上義清)「この値段でいいのか!?」

商人「何かご不満でもございますか。」

私(村上義清)「いつもより安くなっておると思うのだが。」

商人「長尾(景虎)様の越後守護並びに関東管領就任を記念しましての特別価格にございます。」

私(村上義清)「でもこれ普通だったらさ……。」


 5000もの兵を率いての上洛。国内随一とも言える貨幣経済が行き渡った京の都での長期滞在。とにかくカネカネカネの朝廷に将軍。そして神社仏閣への献金を重ねに重ね、やっとの思いで獲得した関東管領の地位。これだけの金銭をばらまいたとなれば当然財政は逼迫。そうなると……。


私(村上義清)「値上げして来るのが普通では?」


 しかも今商人が持って来たのは、市場をほぼ独占している青苧。これが無ければ村上義清が唯一換金することの出来る麻織物を作ることは出来ない。それに加えて……。


私(村上義清)「関銭も安くなって……。」


 村上義清が居る北信濃や会津からの荷物の集積地であり、京と東北・蝦夷の間の中継地でもある越後は数多くの船と荷物が集まる場所。その越後の全てを長尾景虎が抑えたと言うことは……。


私(村上義清)「入港料や手数料を決めることが出来る立場にあるにもかかわらず……この値段で良いのか?」

商人「『立ち寄っていただいて初めて収入となるのであるのだからケチなことは言ってはならぬ。もしそれをやったがために、無理な航路をとって遭難してしまったり、別の道を選択されてしまっては元も子もない。』とのお達しがございまして……。」

私(村上義清)「1つ1つは安くなったとしてもそれ以上の仕入れや行き来が生まれれば、結果的に得をすることになる。」

商人「はい。」

私(村上義清)「勿論、値段と動く量を計算しての事だろ。」

商人「……その辺りは良しなに……。」


真田幸隆「いやぁ……。首根っこをつかまえられてしまいましたね。」

私(村上義清)「ここまで値段が下がるとなると、もはや陸路や天竜川はないぞ。」

真田幸隆「青苧のほうは如何でしょう。京に上る費用を確保するために大量生産したとかは……。」

私(村上義清)「いや。そうでは無いと言っておった。質の方も、目の肥えている京に持って行くこともあってか、いつも以上に良いものがこちらにも流れて来ておる。」

真田幸隆「いつも通りに過ごしているにもかかわらず、あれだけの兵を率いて京へ……。」

私(村上義清)「敵に回さないほうが良いな。」

真田幸隆「そうですね。」

私(村上義清)「ところで幸隆。これを見てはくれぬか。」

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