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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
統一

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嫌がらせに

 数日後。


私(村上義清)「春日(虎綱)から報告があってな……。」

真田幸隆「なんでしょうか。」

春日虎綱(文)「『井上との境並びに井上領内において挑発行為を行え。』との指示でありますが、『既に開墾されているところの邪魔をしてはならない。』『井上領内にある堤防を悪戯に弄ってはならない。』『もし弄るのであれば補強を兼ねて桑の木を植樹せよ。』『葦の刈り取りを阻止する代わりに、既に用意してあるすぐに使うことの出来るものをタダ同然の値段で提供せよ。』『もし抗議されたら素直に聞き入れ領内に戻れ。武力の行使に動かれても相手に危害を加えることは相ならない。』」

私(村上義清)「これで間違いないか。」

真田幸隆「はい。」

春日虎綱(文)「嫌がらせになっていないように思うのでありますが……。普通でしたら収穫直前の稲を刈り取りましたり、火を放っての略奪行為をすることになるのでは……。」


 敵地で略奪や火を放つことは良く行われた行為。その際、被害に遭った領民が恨むのは加害者では無く、税を納めているにもかかわらず守ってくれなかった領主のほう。


春日虎綱(文)「井上領側の民から『お疲れ様です。』と言われましたり、井上の家臣と思しきものから『共同で何かしませんか。』と持ち掛けられましたりと……悪い気分はしないのでありますが、目的は確か……井上領の攻略だったハズではなかったかと……。」

真田幸隆「別に断交しているわけではありませんので、向こうがそう思っていただけているのでありましたら範囲を広げていっても問題無いかと。ただなにぶん地の悪いところでありますので拠点にすることは出来ませんし、相手側の計略の可能性もありますので常に逃げることが出来る範囲を守るよう伝えてください。」

私(村上義清)「桑の木のほうは。」

真田幸隆「必要?」

私(村上義清)「一応お金使っているからさ。」

真田幸隆「いづれ治めることになる場所。そうなった時、避けて通ることが出来ないのが大水。その被害を少しでも緩和するための先行投資。堤防の強化と思っていただければ宜しいかと。」

私(村上義清)「春日は井上領には。」

真田幸隆「留まりませぬ。毎日帰って来ます。」

私(村上義清)「夜の間に根こそぎ引き抜かれてしまうことは。」

真田幸隆「葉を採られるぐらいでありましょう。」


 蚕の餌。


真田幸隆「むしろ向こうに『価値がある』と思えば大事に扱っていただくことが出来ますし、人の手が入れば自然と堤防が踏み固められることにもなりますので。先行投資です。」

私(村上義清)「しかしそれではいつまで経っても。」

真田幸隆「……そろそろ私の出番になるかと……。」

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