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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
統一

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開墾

 村上義清は北へ向け人を派遣。その目的は開墾。とは言えそこは井上氏と境を為す場所。ここは通常、井上村上双方に税を折半して納める「半手」の地域。そこでの開墾活動。それも一定規模の人数ともなれば

『村上義清が実効支配を目論んでいる。』

と井上側から捉えられても仕方のない状況。当然の如く井上氏は反発。領土の境界に緊張が走るのでありました。


私(村上義清)「何植えようか?」

真田幸隆「呑気ですね。」

私(村上義清)「折角の機会だからさ。」

真田幸隆「これまで何も無かった場所。境を為していたから双方とも遠慮していたわけでは勿論ありません。川の水を制御することの出来ない場所でありますから。それは今も解決しておりません。故に不作続きの中にあっても住民が手を付けることはありませんでした。」

私(村上義清)「少しでも井上に対し『本気で開墾に来ているのですよ。』を示す必要があるな……。あそこで出来るものとなると……葦でも植えてみようか。」

真田幸隆「あって困るものではありませんが、あそこなら黙っていても生えて来ます。」

私(村上義清)「あって困るもので無い。必要なものであるのなら商品化も……。」

真田幸隆「消費地の京まで持って行く費用と合いません。それに……。」


 派遣されたのは元志賀城の面々。


真田幸隆「(葦の栽培が仕事と聞いたら)彼ら泣きますよ。」

私(村上義清)「本来の目的は違うだろ。」

真田幸隆「勿論井上が思っているあれ以上のことでありますよ。」

私(村上義清)「でもそれだけだと彼らはただの消費者になってしまうわけであるから何か仕事を見つけないと……。葦の利権なんてないだろ。」

真田幸隆「確かに。」

私(村上義清)「民がわざわざ川まで来て、刈り取ったものを持ち帰って乾かし。更には加工するまでに掛かる手間よりも買ったほうが安いと思わせる値段と出来を提供することが出来れば、(千曲川を指しながら)あれだけの規模があるのだから、そこそこの収益に繋がると思うのだが……。」

真田幸隆「低率税制が売りの村上家でありますよ……。」

私(村上義清)「でもこれは採取から加工に運搬。それに設営保守までを一貫して請け負うところまで行けばもはや税では無いだろう。産業として成立するだろうに。」

真田幸隆「……値段設定次第になりますね……。」

私(村上義清)「うまくいけば井上領にも仕事として堂々と入ることも出来るかもしれぬし。」

真田幸隆「……まぁ稲を植えて雨で流されるぐらいなら、そのほうが……良いのかもしれませんね。ところで殿。」

私(村上義清)「どうした。」

真田幸隆「そろそろ本来の目的の話に戻しても宜しいでしょうか。」

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