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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
亀裂

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保有

真田昌幸「これは輝虎が越中に入る前の話でありますが、上杉方が越中における前線基地は今よりも遥か西に位置する日宮城でありました。が現在、日宮城は一向宗の手に落ちています。落ちた理由についてでありますが、本願寺の動員力の多さは勿論の事であります。ありますが上杉が苦戦している最も大きな理由は彼らが持っている武器であります。それは何かと言いますと種子島であります。」

春日虎綱「種子島なら輝虎にも売る程あるはずだが?」

真田昌幸「はい。種子島の数だけでありましたら上杉も負けてはいません。ただそれは種子島自体の数であります。問題となっているのは一向宗の持つ玉薬の量であります。日宮城が降伏開城に追い込まれた最も大きな要因は弾切れであります。一揆衆は種子島を装備して城に押し寄せて来ます。これに対処するためには種子島と同じ射程距離を持つ種子島が必要となります。地の利は城側にありますので、押し寄せる一揆衆を退ける事に成功します。しかしそれで戦いは終わりません。一揆衆は新手の部隊を組織し二度三度と城を脅かす事になり、その都度日宮城は対応を余儀なくされる事になりました。結果。城を守るために必要不可欠な玉薬は底を尽き、城を失う羽目になりました。」

春日虎綱「輝虎が入ってからも状況は好転していない?」

真田昌幸「越後からの後発部隊に対し輝虎は『敵兵の数が多い事。』『忠誠度に揺らぎが見られない事。』そして『種子島に注意せよ。』と指示を出している所を見ますと現状は、一揆衆に対抗出来るようになった段階でありましょうか。しかし加賀南部の門徒に動員を掛けている事を見ますと、一揆衆も苦しい状況にあると見て間違いありません。」

春日虎綱「いづれ輝虎が勝利を収める事になる?」

真田昌幸「それぞれの本拠地からの距離を考えますと。しかし一揆衆は普段、別の仕事に従事しています。いくさをする事を生業にしているわけではありません。ありませんので、状況に応じ一向一揆衆と一般大衆を使い分けて来る事が予想されます。束ねる人物は勿論います。勿論居ますが我らと違い、存在が見え難い所があります。よしんばその人物を討つ事が出来たとしましても、すぐ次の指揮者が石山から派遣される事になります。」

春日虎綱「いたちごっこになる危険性がある?」

真田昌幸「はい。特に今戦っているのは輝虎であります。越中を直轄化しなくても十分な国力が越後にはあります。故に降伏した者を許す事多々であります。」

春日虎綱「『どうせあいつなら見逃してくれる。』と。」

真田昌幸「はい。関東と同じ事態が繰り返される危険性が越中にも孕んでいます。」

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