再興
武田義信。比叡山再興を宣言。
私（村上義清）「火種を追加しないでくれぇ！！！」
春日虎綱「先の焼討から難を逃れた正覚院豪盛が甲斐に下り、武田義信と謁見。そこで合意に達した模様であります。」
私（村上義清）「再興する場所は甲斐国内？」
春日虎綱「巷間。身延山を考えているとか。」
私（村上義清）「（身延山に拠点を構え、京で喧嘩ばかりしていた）法華宗が黙っていないぞ。」
春日虎綱「甲斐の中心部でも良いのかもしれませんが、武田の菩提寺は臨済宗でありますからね……。ただ武田領内の何処かで保護する事は確かであります。しかしそれだけが比叡山と武田義信の目的ではありません。狙いは勿論。」
比叡山で延暦寺を復活させる事。
春日虎綱「であります。」
私（村上義清）「事実上、信長打倒を打ち出した事になるな。」
春日虎綱「はい。」
私（村上義清）「しかし……。」
春日虎綱「何か気になる事でも御座いますか？」
私（村上義清）「比叡山は伝統があり、京など有力者の子弟が多数入っている寺ではある。それは確かな事なのだが、今はその力は無いばかりか存亡の危機を超え有名無実と化してしまっている。」
春日虎綱「はい。」
私（村上義清）「そこから逃げて来た者の訴えに応える理由が正直わからない。義信は理想主義者か？」
春日虎綱「これまでの彼の行動。優先事項を整理した上で権益拡大していく姿を見る限り、理想だけを追い求めているとは思えません。もしそうでありましたら父の意志を引き継ぎ、我が領内への侵攻を試みていたものと思われます。」
私（村上義清）「そうだよな……。」
しばらくして。
春日虎綱「武田の身辺を調べました所、義信による今回の延暦寺再興表明に至った経緯がわかってきました。」
私（村上義清）「申してみよ。」
春日虎綱「はい。まず豪盛が伝えたのは人と物の流れについてであります。これまで。特に近江において荷役運搬を担っていたのは比叡山でありました。ありました。と過去形になっているのは勿論織田信長の進出が影響しての事であります。信長が近江で最初に行ったのは街道の変更であります。これを行う事により、人と物の流れの全てを信長が掌握。自分の息の掛かっていない人と物の全てを排除している事を義信に訴え出ました。
武田は今、物資の不足に悩まされています。特に困っているのが種子島を機能させるのに欠かす事の出来ない玉薬であります。玉薬があるのは堺であります。その堺を今掌握しているのは織田信長であります。近江国内では今でも玉薬が動いています。動いていますが、その配達先の全てが美濃である事も伝えています。
つまり信長を倒さない限り、義信は玉薬を手に入れる事が出来ない状況に陥っているのであります。」
