方針
真田幸隆「家康が動くとなれば義信も対応しなければならなくなる。氏政は天竜川から東の遠江が武田領と考えているが、義信はそう考えているとは限らない。家康も家康で当初、武田との境界線を大井川に設定していたが反故にされた経緯がある。そこに今川氏真がやって来た。今川は駿河に遠江。そして三河にまで勢力を伸ばした実績がある。とりわけ駿河は本貫地であり、今回の武田と北条の取り決めを認めていない。家康が駿河を目指す大義名分を得たも同然……。今後、両者の争いは激しいものとなる。家康から何か言われているか？」
春日虎綱「お互い決められた境界線を順守する事に変わりはありません。こちらもうちの境界内に入らない限り動く事は無いと伝えています。」
真田幸隆「それだけか？」
春日虎綱「気にしているのは北条であります。家康は今回、うちが武田から受けた仕打ちを北条から喰らっています。今後、武田との和睦が正しかった事を証明するため義信の駿河遠江統治を後押しする事になります。武田との境界線を守るだけでは無いでしょう。兵を供出する可能性もありますし、義信が今困っている玉薬の供給を行うかもしれません。家康からすれば避けたい事態である事に間違いありません。」
真田幸隆「そうなりますと殿。」
私（村上義清）「武田とも徳川とも接していないお前の働きが重要になるな。」
真田幸隆「御意。」
私（村上義清）「俺か四郎が入った方が良いか？」
真田幸隆「いや。それには及びません。」
私（村上義清）「守勢に立たされることになるぞ？」
真田幸隆「構いません。私の目的は北条を関東に釘付けにする事にありますし、箕輪を落ち着けるのが先決であります。勢力の拡大を図る時期にはありません。それよりも武田と徳川双方互いに譲る事の出来ない東海道筋に注力するべきであります。時と場合によっては、境界線を越えなければ事態が発生するやもしれません。その時、うちの主力が関東に居ては対処する事が出来ません。すぐ馳せ参じる事が出来る臨戦態勢を維持しなければなりません。」
私（村上義清）「お前の所はそれで良いのか？」
真田幸隆「上杉輝虎から関東を託されている事。私が関東に常駐している事。そして何より北条から領土を奪い返した事により、関東での協力者。それも北条と渡り合える勢力との繋がりが出来つつあります。尤も境界を接していないため、連絡の段階ではありますが。いづれ連携し、北条打倒を目指していく所存であります。」
春日虎綱「玉薬には限りがありますからね。」
真田幸隆「わかっておる。」
