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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
焼討

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販売

春日虎綱「比叡山の富の源泉となっているものとなりますと、あとは販売になりますか……。比叡山は、京や近江に大規模な市を開いています。この市に入る事が出来るか否かによって売り上げは大きく変わって来ます。入る事が出来る事は

『比叡山が認めた確かなもの』

と世間に知られる事を意味します。故に皆が入りたい。ただそれには条件があります。品質が第一であります。第一でありますが、それだけでは参入する事は出来ません。これに加え必要なのがお金であります。そのお金は何処へ行くのでしょうか?勿論、市を主催する比叡山の収入となります。」

私(村上義清)「それに対し信長は?」

春日虎綱「尾張南部のみを所領にしていた頃はそれで良かったと思います。今の我らと同じです。直接京に行く事が難しい。仮に派遣出来たとしても自分の所領の維持だけで人材が居なくなってしまう状況でありましたら、お金を払うだけで捌いてくれる比叡山に託した方が、利益が出る事になりますので。」

私(村上義清)「何処で変化が生じたのだ?」

春日虎綱「尾張の統一。並びに美濃中西部への進出であります。ここに至る過程の中で、信長子飼いの家臣が成長を遂げています。と同時に斎藤の家臣団を傘下に収めた事が1つ。そしてもう1つが京で売れる特産品を手に入れた事であります。その特産品は絹織物であります。絹織物は比叡山が独占で販売をする権利を有しています。

 今、信長は美濃尾張を始め、伊勢に近江の大半。そして京。更には畿内へと勢力を拡大しています。大きな市場である京に出入り出来る態勢が整いつつあります。比叡山の持つ運輸に仕入れ。販売する力を借りなくとも、絹織物を京へ運ぶ術を持っています。信長にとって比叡山は、美濃から京への安全を脅かす害虫。丹精込めて作り上げた絹織物の利益を吸い取る寄生虫にしか見えていなかったのでは無いかと。害虫となれば駆除するしかありません。その方法が今回の野焼きであったと。」

私(村上義清)「しかし比叡山が居なくなったとなると……。」

春日虎綱「信長はここ数年。人の流れを変える施策を採っていました。目的は勿論、比叡山の資金源を断つためであります。そのために彼は近江で新たな市を立ち上げています。加納で行った経験をぶつけたものと思われます。参入者自由の。尤も大半は信長の息の掛かった尾張の絹織物でありますが……。」

私(村上義清)「参入自由となる欠点は無いのか?」

春日虎綱「質を保証する人物が居ませんので、買い手の目利きが重要になって来ます。

『正直これは……。』

と言うものも並んでしまっています。市の信用にも関わって来ますので、いづれ新たな規制が必要になるかと思われます。」

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