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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
甲斐の虎

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勝ち馬に

 上原、桑原落城の報せが武田晴信の本拠地甲斐に。奪った人物は元家臣の真田幸隆。主力は村上義清討伐のため留守。この緊急事態への対応を図るべく飯富虎昌らが中心となりいくさの準備に取り掛かったその時。


「板垣信方、甘利虎泰両名村上義清とのいくさにより討ち死に。御館様の安否は不明であります。」


 諏訪どころでは無い。御館様の救出に向かわねば……ただ諏訪からの道は真田に抑えられている。佐久は平定しているが、半年前に虐殺をした志賀を通らなければならない。御館様の安否がわからない。と言うことは少なくとも村上に勝つことは出来ていない。負けたとみるのが自然。この報せが甲斐に届いたとなれば、当然甲斐より近い志賀にももたらされている。無事に通ることが出来るのか……。当惑する甲斐の国に更に……。


「小笠原長時。塩尻峠を越え下諏訪に侵攻。金刺は降った模様であります。」

下諏訪は武田晴信と同盟関係にある金刺氏の本拠地。晴信が甲斐の国主となってから手塩に掛けて治めて来た諏訪が一夜にして敵の手に落ちたのでありました。


私(村上義清)「諏訪を取りたいと。」

真田幸隆「はい。」

私(村上義清)「遠くないか。」

真田幸隆「晴信はあそこからこちらに入って来ますので、可能であればこちらの手に収めておきたいものであります。」

私(村上義清)「仮に奪うことが出来たとしてもこっちに名分がないぞ。」

真田幸隆「確かにありません。」

私(村上義清)「常に狙われることになるぞ。」

真田幸隆「そうならないようにするためにうってつけの人物が居るかと……。」

私(村上義清)「諏訪大社の上に立つことの出来るもの……。」

真田幸隆「殿と繋がりのあるかたで……。」

私(村上義清)「……守護(小笠原長時)か?」

真田幸隆「はい。彼であれば高遠や藤沢も迂闊なこと(上諏訪への侵攻)は出来ないかと。」

私(村上義清)「頼りになるか?」

真田幸隆「わかりませぬ。」

私(村上義清)「だろう。」

真田幸隆「しかし名前はあります。」

私(村上義清)「動くと思うか?」

真田幸隆「勝ちいくさになれば。」

私(村上義清)「どこまでいけば。」

真田幸隆「晴信を討ち取ることが出来れば。であるかと思われます。」

私(村上義清)「相当難しいと思われるが。」

真田幸隆「逆に言えば、そこまで行かなければ小笠原は動きませぬ。」

私(村上義清)「こちらの戦況次第で戦線を決めることが出来る。」

真田幸隆「はい。」

私(村上義清)「ただ南に兵を回すとなると……。」

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