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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
同盟崩壊

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弱腰

真田昌幸「殿。」

私(村上義清)「どうした?」

真田昌幸「1つお尋ねしても宜しいでしょうか?」

私(村上義清)「構わん。申してみよ。」

真田昌幸「松井田開城までのいきさつについてであります。松井田は堅固な城であります。攻略には相応の犠牲を覚悟しなければなりません。故に平和裏に事を収めたいとの考え。私も同意見であります。ありますが、上野におけるいくさは今後も続いて行きます。まだ殿の方針に従わない者が居ますので。その中の1人が安中でありました。

 その安中に対し、元々彼らが持っていた権益を彼らに渡したままでの和睦。あまりにも妥協し過ぎなのでは無いでしょうか?これを見た倉賀野や箕輪。更には岩櫃、惣社に白井と言った者共は殿を

『抵抗の意思を示しただけで、いくさを仕掛ける事も出来ない臆病者。弱腰だ。』

と評価されてしまったのではないか?と感じるのでありますが如何でしょうか?」

私(村上義清)「虎綱が気にしている事があってな。」

真田昌幸「何でありましょうか?」

私(村上義清)「うちの軍事物資。特に玉薬は越後から購入している。ただ購入しているのは信濃においての話であって、上野はそうでは無い。輝虎から無償で供与されている。『関東管領の仕事を遂行するため』として。今、鉢形を維持する事が出来ているのはそのおかげと言っても過言では無い。

 同じ事は上野の国衆にも言える。彼らも輝虎から無償で提供されていると考えるのが自然。つまり上野の各城には大量の玉薬が備蓄されていると見て間違い無い。その数がどれだけなのか?を把握する必要がある。と。

 松井田に関しては正直妥協し過ぎている。重繁に対しても景繁に対しても彼らの家臣に対しても。うちの誘いを断った上、兵を進めただけで景繁は降伏した。じゃあ何で最初拒絶したんだ?と……。重繁も同じ事。確実に便りが届けられたにも関わらず返事が無かった時点で交渉は終わり。後はどちらが城を確保するか?武で以て。となる。

 『それでも。』と何度も何度も交渉をした事は悪い情報を流してしまったと思っている。それは認める。しかし松井田で強硬策に打って出たとて、他の国衆が従うとは思えぬ。従うのであれば、最初の誘いに乗るハズであるのだから。

 ならばうちに従うか迷っている重繁を抱き込み。無傷のまま松井田にある玉薬の量を把握した方が、今後のいくさを進めるための参考になるのでは無いか?

 それにどうせいくさになるのであれば、敵に舐められていた方が良い事もあるので。」

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