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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
同盟崩壊

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摘み田

 先に秩父に入っていた真田信綱に幸隆が合流。そこに村上義清の勝報が届き、浮足立つ秩父界隈に村上義清が到着。北条との縁を切れば今の権益を保護する事を条件に帰順を認めるが、抵抗の意志を示した者には武で以て対処する事を通告する村上義清。

滝山で北条氏照。拝島では北条氏邦とその氏邦に与力していた秩父の国人がそれぞれ敗れた効果は大きく、村上義清は秩父一帯の掌握に成功したのでありました。


私(村上義清)「さて。今後はどうしたものか……。山の縁を伝ってもう一度滝山を目指すのも手ではあるが……。」

真田幸隆「それが目的でありましたら(滝山を)あのような事にはしませんでした。要害が無い分、兵の展開は楽になりますが。」

私(村上義清)「相模や河越からの攻撃に耐える事は出来ない。」

真田幸隆「はい。」

私(村上義清)「仮に滝山があったとしても、うちは常に背水となり、退路も塞がれながらのいくさを余儀なくされてしまう。」

真田幸隆「相模に対して。となりますと拝島を拠点にする選択肢もありますが、そのためには河越を押さえなければなりません。」

私(村上義清)「そうなると川を下るか……。」

真田幸隆「はい。ただ統治を目指すに足る利点があるかどうかわかりません。」

私(村上義清)「どう言う事だ?」

真田幸隆「武蔵には鉢形を流れる荒川に滝山を流れる多摩川。そして上野との境を流れる利根川と言いました大河川があります。その中でも乾いた所を使い城が造られています。城の防御に用いられているのは川のほか。泥や沼。乾いていない場所でありますので我らが得意としています機動力を活かす事は難しく、攻め落とすには途方もない労力を要する事になります。

 そこまでして獲得したとしましても周りは沼地。湿地帯であります。そんな条件の悪い場所でも耕作が行われています。けっして実りが悪いわけではありません。秩父同様温暖な場所でありますので。ただ秩父とは異なる点があります。それは大雨です。先程からも述べていますように鉢形から下流部一帯は泥地であり、沼地であります。このままでは耕作は出来ません。ではどうやって稲を栽培しているのか?と言いますと、冬。他所から土を持って来て自分の農地に補給する。と言う途方もない作業に従事しています。

 そんな苦労をして造った農地も、大雨1つで何処かへ流されてしまいます。それを防ぐため、田を固定したり、予めひもで結んでおいて引っ張って戻す対策を施している方もいらっしゃるとか。しかも田んぼの下が深いため、丸太で足場を造らなければ農作業が出来ない。足を踏み外したら最後。二度と這い上がる事は出来ない過酷な環境に晒されています。

 当然収量は安定しません。豊作時に人口が増え、凶作になると増えた人口によって飢えに苦しむ事になります。今、手を出すべき場所ではありません。」

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