残った
私(村上義清)「残った滝山城はどうする?」
真田幸隆「使いますかね?うちに徹底的に調べ尽くされ、武田からの侵入を遮るものが何も無い滝山を。氏照が。」
私(村上義清)「そう言われてみればそうだな……。」
真田幸隆「ただうちが拝島でいくさを始めている事がわかれば、多摩川を渡って来るのは必定であります。平地での戦いとなれば数が物を言って来ます。出来る事でありましたら氏照の参戦は避けたいものであります。加えて滝山。特に新しく造ったこの構造物には様々な仕掛けが施されています。私が城を守るために必要と考える防御機能の全てが集められています。それらを北条に知られるのは今後の争いにおいて不利益となってしまいます。城を明け渡す以上、破却する必要があります。」
私(村上義清)「しかしそんな時間は無いぞ。」
真田幸隆「そこは抜かりなく。既に手配済みであります。」
私(村上義清)「ん!?」
翌朝。複数の爆音に目を覚ました北条氏照本陣。音の方角に位置するのは滝山城。
「いったい何が起こったのだ?」
と見やる北条兵の目に飛び込んで来たもの。それは……。
拝島。
真田幸隆「滝山は今頃、炎に包まれている事でありましょう。確かにあそこは防御に難のある城であります。しかしそれは今までいくさの無かった南や西から攻められた時の話。我らが狙う北からでは攻略が難しい城である事に変わりありません。出来る事でありましたら、そのまま維持したいのが本音であります。しかしそれは叶わぬ夢であります。それならば……。」
前日。滝山城。
私(村上義清)「二度と城を使う事が出来ぬよう、縄張り毎破却してしまえば良い。お前らしいと言えばお前らしいな。」
真田幸隆「明日の今頃、氏照は滝山から離れる事は出来なくなっている事でありましょう。」
私(村上義清)「そうなれば敵は氏邦に絞り込む事が出来る。」
真田幸隆「左様。」
拝島。いくさの舞台である滝山城は川の対岸である事に加え、敵は偽りの和議を受諾している。当面実戦は無いであろう。と油断し、寝入っていた所に真田幸隆の一斉射撃。まだ眠りから覚めやらぬ中、突っ込んで来たのが村上義清の本隊。種子島の砲撃に長槍。騎馬を突っ込ませては再び砲撃の波状攻撃により、氏邦本陣は大混乱。一刻持たずに決着。
私(村上義清)「氏邦はおらぬか……。」
討ち取った将の確認を終えた村上義清は、武蔵における拠点鉢形城へ兵を進めるのでありました。一方、真田幸隆は……。




