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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
同盟崩壊

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退却出来ない

私(村上義清)「氏照は生かす。その周りの連中も同様。しかし城門周辺で立ち往生している連中はその限りでは無い。」

真田幸隆「重要なのは、氏照の部隊を機能不全に陥らせる事であります。先程も述べましたように氏照の周りを固める連中は普段の内務やいくさに勝った後の処理。並びに自領の治安維持に長けている者が大半を占めています。いくさには不向きとまでは言いませんが、必ずしも得手であるわけではありません。一方、今城門の前で我らの集中砲火に悩まされている連中は逆であります。いくさの場での活躍に一日の長がある連中であります。どちらも無くてはならない存在ではありますが、我らにとって脅威となるのは後者。いくさに強い連中であります。彼らを仕留める事が出来れば、今後の滝山統治を優位に進める事が出来ます。」

私(村上義清)「氏照としては避けなければならない事態になる?」

真田幸隆「本拠地である滝山失墜の汚名を注ぎ、北条家中における地位を回復するためにも滝山奪還は必要不可欠であります。」

私(村上義清)「今回は情勢不利であるから撤退したい。しかしこのまま撤退するわけにはいかない。ここでの損失は今後の用兵に支障を来す事になる。」

真田幸隆「支障どころではありません。再起不能に陥る危険性もあります。兵の数だけでありましたら回復する事は可能であります。カネで雇う事も出来ますし、訓練を施せば実戦に投入する事が出来ますので。しかし彼らを束ねる大将はそうではありません。僧侶になった遺族を還俗させれば済む話ではありません。10年単位で育てなければものにはなりません。

 加えて、遺族が氏照の下で働きたいと思うのか?であります。関東随一の優遇税制を採用し、出自を問わず人材を抜擢するのが北条であります。関東には北条の進出を望んでいる者が多いのも事実であります。ただそれは北条の話であります。氏照の話ではありません。ただその氏照も今の段階ではその上司になって欲しい北条の一人であります。」


 家臣を置き去りにして撤退しなければ……。


真田幸隆「ここで氏照が撤退すれば、滝山攻略の案を練り直す事が出来ます。そして盤石な態勢で城取に臨む事が出来ます。ただそれを実行に移す事は出来ません。何故ならそれを担うべき人材を滝山城門で失ったばかりで無く。それを補完するだけの人員を揃える事が出来ないからであります。

『あいつは不利な局面になると見捨てる奴だ。』

の評判がついて回る事になりますので。」

私(村上義清)「となると氏照は撤退しない?」

真田幸隆「正確には『出来ない。』であります。」

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