本来ならば
村上義清の十字砲火により、滝山城門前と新たに築いた構造物への動線で大混乱に陥る北条軍。ここで……。
私（村上義清）「本来ならば、ここで城門を開けたい所なんだけど。」
真田幸隆「城門近辺の北条兵を間違いなく討ち取る事は出来ます。」
私（村上義清）「ただ城門を開けるとなると。」
真田幸隆「はい。北条の兵が城に押し出される危険も生じる事になります。」
私（村上義清）「やむを得ず城内に入ってしまうのだから、組織的な抵抗をされる恐れは少ないのではあるが。」
真田幸隆「はい。滝山は城そのものが弱点であります。」
私（村上義清）「それに一度開いた門は……。」
真田幸隆「殿を見捨てても宜しいのでありましたら、即刻閉じる事も可能であります。」
私（村上義清）「そうなるよな。」
真田幸隆「しかも新たな構造物への道は坂以外これと言った防御手段はありませんので、種子島の砲火を止める事は出来ません。故に我が種子島部隊は洗練されてはおりますが、流れ弾と言うものがどうしても発生してしまうものであります。もし殿に被弾と言う事態に陥ってしまいましたら……。寿命と思っていただく所存であります。」
私（村上義清）「それは止めて。ただ打ち据えているだけでは決定的な打撃を与える事は出来ない。」
真田幸隆「えぇ。それに玉薬にも限りがあります。」
私（村上義清）「言っている事とやった事が一致していないような気がするんだけど。」
真田幸隆「あれは北条の兵を騙すためには無くてはならない必要経費であります。」
私（村上義清）「（『狼煙で代用出来る』と言っていただろ。）」
真田幸隆「殿。」
私（村上義清）「どうした？」
真田幸隆「『氏照に決定的な打撃を与えたい。』と仰りましたね。」
私（村上義清）「それがどうした？」
真田幸隆「もし今、城門を開き。外へ出た場合。それは可能でありますか？」
私（村上義清）「城門前に集まった連中を片付ける事は出来る。」
真田幸隆「それで氏照の部隊は壊滅しますか？」
私（村上義清）「遠くに。まだこちらを伺っている部隊が多数あるな。」
真田幸隆「氏照の本隊は城門の前に居ますか？」
私（村上義清）「一番安全な場所で督戦しておる。」
真田幸隆「今、城門を開いたとして殿は氏照を討ち取る事は出来ますか？」
私（村上義清）「俺がお前に討ち取られる方が先だな。」
真田幸隆「ですよね。」
私（村上義清）「何が言いたいんだ？」
真田幸隆「殿。」
私（村上義清）「どうした。」
真田幸隆「私に策があります。ただそれには……。」
