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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
元亀争乱

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私(村上義清)「もう1つは甲斐の事か?」

高遠勝頼「はい。」

私(村上義清)「お前が持って行った事に不審感を覚えたのか?」

高遠勝頼「いえ、それはありませんでした。『いつもの奴に比べれば信用出来る。』と申しておりました。」

私(村上義清)「いつもの奴って……。」

高遠勝頼「たぶん殿の脳に思い浮かんでいるあのお方様であります。」


 真田幸隆。


私(村上義清)「お前が行ったのであるから別に問題無かったであろうに。」

高遠勝頼「そうなのでありますが、開口一番。先方から言われた事を申し上げますと……。」


 頼んでいない。


私(村上義清)「どう言う事?」

高遠勝頼「正しくは『打診はした。』と。ただ『(輝虎からの)了解を得る事がまだ出来ていない。故に発注もしていない。』もし私で無く真田様が持って行ったのであれば、『あいつ(真田幸隆)の計略に違いない。』と受け取りを拒否していたとの事でありました。」

私(村上義清)「余程の事をやっているんだな。あいつ……。しかしそうなると……。」


 運賃払ってくれるの?


私(村上義清)「納品の目録はあるよね?」

高遠勝頼「はい。尤も塩1品しかありません。数量につきましても伝票通りであります。」

私(村上義清)「義信宛の物も照合した?」

高遠勝頼「甲斐遠江共にうち宛だけでは無く、向こう宛。輝虎から義信に送られた伝票と確認しました。」

私(村上義清)「間違いは無かった?」

高遠勝頼「はい。」

私(村上義清)「単価は書かれていた?」

高遠勝頼「数量以外ありませんでした。」

私(村上義清)「後日請求書を持参した8千の兵が突っ込んで来るって事無いよね?」

高遠勝頼「もしそうでしたら輝虎に運賃を払う気は無い事になりますので、殿も一緒に甲斐に乱入する事になりますよ。」

私(村上義清)「自動的にいくさに巻き込まれるって事!?」

高遠勝頼「兄上からすれば身に覚えの無い。ただ送り付けられただけの品でありますので、もし来たら全てを返品してしまえば万事解決であります。」

私(村上義清)「でもそれを越後に戻すのは……。」

高遠勝頼「当然うちになります。」

私(村上義清)「……またやるの?」

高遠勝頼「ただその場合は、うちが輝虎に費用を負担させる事が出来ますので。」

私(村上義清)「でも回収するのは?」

高遠勝頼「諏訪、高遠の衆に真田様、国清様の家臣。あと仁科様との信頼関係を維持向上したいのでありましたら、たとえ上位者でありましても嫌な事を言わなければならない時もあるでしょう。」

私(村上義清)「……輝虎に聞いてみる。」 

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