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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
元亀争乱

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限度

 しばらくして……。


私(村上義清)「幸隆すまん。」

真田幸隆「どうなさいました?」

私(村上義清)「(千国街道筋の)仁科の所に大量の塩が運ばれて来て居て、『とてもではありませんが捌けません。至急人足の手配をお願いします。』の催促が届いているんだよ。」

真田幸隆「誰か単位を間違えて発注したのですか?」

私(村上義清)「いや。そうでは無くて、行き先は皆『甲斐』となっている。」

真田幸隆「義信が発注した?」

私(村上義清)「それもあるとは思うのだけど、それにしても尋常では無い。仁科が困るとなると相当だぞ。」

真田幸隆「そうですよね。」

私(村上義清)「とりあえず国清にも言って回す事にする。お前の方も可能か?」

真田幸隆「護衛が必要な場所ではありませんので、作業員だけでありましたら……ところでどれくらい必要と言っていますか?」


 無言で示す村上義清。


真田幸隆「えっ!?何十年氏真といくさをするつもりでありますか?」

私(村上義清)「おかしいだろ?この量。」

真田幸隆「確かに。目的は本願寺の救出及び将軍様による信長追討の実現でありますので、そうなりますと当然氏真とのいくさは早く片付けなければなりません。」

私(村上義清)「駿河には海があるよな?」

真田幸隆「はい。」

私(村上義清)「塩取れるよな?」

真田幸隆「海がありますので。」

私(村上義清)「海があるって事は?」

真田幸隆「船の確保は必要でありますが、京との行き来も容易となります。」

私(村上義清)「で。この量って?」

真田幸隆「おかしいですね。」


 国清、幸隆からの応援を加え、人海戦術で荷物を捌き到着したのが……。


私(村上義清)「当然そうなるよね……。」


 村上義清の居る深志城。目的地は甲斐と遠江の武田領。まだまだ遠い。


高遠勝頼「駄目ですよ殿。こんな発注しましたら。確かに塩は生活必需品ではありますが、領内で消費される以上利益を産み出すものではありません。それに支払いは待ってくれませんよ。」

私(村上義清)「お前の兄は正気か?」

高遠勝頼「(目録を見て)兄上の発注でありましたか。しかし珍しいですね。慎重にも慎重を期すのが兄上のやり方なのでありますが……。」

私(村上義清)「ところで気付いて居ないと思うけど、ここから甲斐と遠江に持って行くのはお前の仕事だからな。」

高遠勝頼「諏訪は真田様の管轄でありまするよ。」

私(村上義清)「姫川を脱出させるのに使い切ってしまったんだよ。いづれ諏訪を継ぐのだから。と今回は身を引く事にしたそうな……。あと、何の企みか定かでない量だから、身内が行った方が無難では無いか。と……。勿論深志から人を出すし、遠江までは虎綱も対応する。とりあえず名前と人を貸してくれ。」


 武田義信の目的とは……。

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