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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
甲斐の虎

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死角

 武田本陣に緊張が走る。


「甘利様が敵に取り囲まれてしまっております!!」


私(村上義清)「甘利が東へ戻ることをお前(真田幸隆)が防ぐと言うことは、見方を変えると……武田の本陣を背にすることになると思うのであるが。」

真田幸隆「その通りであります。」

私(村上義清)「その通りってお前。」


武田晴信「虎泰を討ち死にさせてはならぬ!!」


 甘利虎泰の危機を受け、武田晴信は兵を西へ進めることを決断。


真田幸隆「甘利にとって出口となる場所に私の旗があれば、敵は俄然力を入れることになるでしょう。」

私(村上義清)「下りを利して一直線に向かって来ることになるな。」

真田幸隆「そこで……。」


 甘利虎泰を救うべく真田幸隆隊に突撃を敢行しようと試みる武田軍に……。


武田晴信「なんだこの鬨の声は?」

山本勘助「雑兵でも仕掛けていたのでありましょうか?」

武田晴信「所詮小勢だ!構わぬ!!そのまま突き進め!!!」


 鬨の声を無視し、真田幸隆の背後を突こうかとしたまさにその時。武田軍の横を1つの部隊が躍り出たのでありました。その部隊こそ。


真田幸隆「ここからが殿の仕事であります。」


 村上義清率いる本隊。そのものでありました。


山本勘助「砥石城に居た奴がいつのまに!?」


私(村上義清)「武田晴信には及ばぬとは言え、私の部隊もそれなりの数を持っておる。砥石城と国分寺は双方ともにほぼ丸見え。兵を隠しながら移動するのは難しいように思うのであるが……。」

真田幸隆「殿が居ます砥石城から尼ヶ淵に向かいまして川が流れております。丁度その川が谷を作っております。そしてその谷筋は武田晴信が本陣を張ることになるであろう国分寺から確認することは出来ません。私が尼ヶ淵を徹底的に目立たせることにより、武田の目を尼ヶ淵に集中させるよう手配します。国分寺から尼ヶ淵は下り一辺倒。勢いがついたらそう簡単にはその動きを止めることは出来ません。どうしても隊列は伸びることになりますし、乱れます。そこを突いてください。ただし……。」

私(村上義清)「お前が挟み撃ちになる前に。だよな。」

真田幸隆「はい。」


 村上義清……もとい真田幸隆の計略に嵌ってしまった武田晴信。ここまで来ればあとは崩れる一辺倒となってしまうのが普通なのでありますが、ここは武田晴信。すかさず山本勘助を通じ次の下知を下すのでありました。


山本勘助「先手右は鋒矢(矢印)に構え突撃!!左右中は偃月(左右が斜めに開く)!後ろは雁行(隊列を斜めに)に構え敵を迎え撃て!!」


 即座に態勢を整えるのでありました。

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