切り崩し
真田幸隆「勝つ事の出来る相手を確実に潰していく？」
春日虎綱「そこまで乱暴な事をする必要も無かったようであります。」
真田幸隆「信長方に居る自分の伝手を頼って降伏を申し出て来た？」
春日虎綱「淀川南東側。信長が進出した方面は概ねそんな感じでは無いかと。松永久秀を介しての者が多いようであります。」
真田幸隆「野田、福島はどうなっている？」
春日虎綱「一言『疑心暗鬼』であります。」
真田幸隆「船が無ければ攻め込む事は出来ない。信長は陸路で来た手前、三好との舟戦には分が悪い。故に信長が力攻めに打って出たとしてもそれ程怖がる心配は無い。」
春日虎綱「はい。」
真田幸隆「ただ裏を返せば船が無ければ脱出出来ない事も意味している。もし野田、福島の中で信長方に転じる者が現れた瞬間。退路を断たれる危険性も孕んでいる。」
春日虎綱「そんな野田、福島の引き締めを図るべく池田城に入っていた三好長逸が福島へ移動しました。移動したのでありましたが、今度は西国からの拠点であります尼崎の別所が信長方に寝返りました。」
真田幸隆「仮に長逸が退いた池田城が信長方になると？」
春日虎綱「はい。三好が目論んでいました西国からの物資を止める事が出来なくなります。」
真田幸隆「池田城内はどうなっている？」
春日虎綱「流石に勝正を追放した手前。信長に降る事は出来ないでしょう。」
真田幸隆「現状は三好方？」
春日虎綱「しかし三好は野田、福島から出る事が出来ませんし、信長は４万の兵を率いています。」
真田幸隆「攻め落とされるのは時間の問題？」
春日虎綱「ただ信長としましても将軍様から借りている家臣及び兵が多数を占めていますし、摂津に河内。そして和泉は直接統治をしていません。故に無理な運用は出来ません。穏便に事を運ばせたいと考えているものと思われます。」
真田幸隆「そうなると切り崩し工作を進めて行くことになる？」
春日虎綱「はい。先の池田勝正が追放された際、それに加担した人物の数は２１人にも達しています。２１人の有力者。勝正に意見する事が出来る。場合によっては追放する事も出来るだけの力を持っている者共が居るわけでありますので。」
真田幸隆「今度はその２１人の中から目ぼしい人物に声を掛け、分断してしまえば良い？」
春日虎綱「加えて今、池田氏には代表者になり得る人物が決まっていません。」
真田幸隆「故に長逸が入っていた。」
春日虎綱「彼らにとって守るためとは言え三好の者が城に入り、指示を出されるのは面白くは無かったでしょう。」
真田幸隆「そんな中、周囲の情勢悪化に伴い長逸が城を離れた。権力の空白地帯が発生した。そこを奪うのは誰になるのか？」
