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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
甲斐の虎

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城門

「そんなこと言われんでもわかっておるわ!!」


 晴信からの使者を一喝する板垣信方。ここは尼ヶ淵要害の外縁部。相も変わらず逃げる真田幸隆隊以外に人は居ない。更に追い掛ける板垣信方と諏訪衆に対し、一定の距離を保ちながら西へと移動を続ける真田勢。


板垣信方「逃げ込みやがったか。あの腰抜けが……。諏訪のもの!これより城攻めに入る。あの門を破壊せよ!!」

諏訪衆「はっ!!!」


 板垣信方直属の家臣に対し


板垣信方「そしてお前たち。周囲に目を配れ。建物の中に誰ぞ潜んでいるかわからぬ。調べよ。」

「はっ!!!」

板垣信方「わしは諏訪のものと共に城攻めへと入る!!!」


 板垣信方と諏訪衆は真田幸隆が逃げ込んだ要害の東門に取りつき、門の破壊に取り掛かろうとしたまさにその時、


「積年の恨みを晴らすときは今ぞ!!掛かれ!!!」


 城内から太鼓が打ち鳴らされたと思ったその時。諏訪衆の頭上に大岩と煮え湯。側面からは弓矢が襲い掛かるのでありました。


矢沢頼綱「兄上よくやった。」

真田幸隆「ここは任せたぞ。」

矢沢頼綱「城の守りは心配なく。」


 矢沢頼綱は真田幸隆の弟。のちに上野において対北条の最前線で活躍した人物。


板垣信方「おのれ幸隆!こざかしい真似をしおって……。敵は小勢なり!力で押し破るぞ!!!」

諏訪衆「はっ!!!」


 更に攻勢を強める板垣信方。


矢沢頼綱「よくもまあ兄上はこれだけの物資を集めたものだ……。あの時、これだけあったのなら。……村上に降ることもなかったであろうし……。殿を見捨てることもなかった……。もっともこれは村上のカネではあるけれどな……。でもいったい兄上はどのようにしてこれだけのカネを村上から引っ張り出したのであろうか……。」


 門に迫る諏訪衆を上ないし側面から妨害し、諏訪衆の足が止まったその瞬間に門を開き追い散らす矢沢頼綱。幾度となく繰り返される光景に業を煮やした板垣信方は。


板垣信方「何をしておるお前たち!!城攻めとはこうするものだ!!!」


と自ら手勢を率い落とされた大岩によじ登ろうとしたまさにその時。


矢沢頼綱「……試してみるか。」


 不意に体勢を崩し、そのまま地面に叩き落される板垣信方。刀を受けたわけでも無い。槍を突かれたわけでもない。矢が刺さっているわけでもない。にもかかわらず倒れてしまった板垣信方。なにが起こったのか。すぐにでも駆け寄りたいがここは守る矢沢頼綱の抵抗が最も激しい門の前。しかし彼らにとって板垣信方は主君。


「あそこを目掛けて落とせ!!!」


 倒れている板垣信方に駆け寄ろうとする諏訪衆や板垣家臣に向け容赦なく岩を投げ捨て続ける矢沢頼綱。そして……。


「板垣信方討ち取ったり!!!」


 その頃……。

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