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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
甲斐の虎

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こちらで引き受けます

「よし!!食いついた!!!」


 自分に向かって来る板垣信方に対し、1人小躍りして喜ぶ真田幸隆。


真田幸隆「おのおのがた!抜かりなく!!!」

家臣「ハッ!!!」


 半年前。


私(村上義清)「板垣と甘利を引き受けると申すのか。」

真田幸隆「はい。」


 私の考えを聞いた真田幸隆は、武田晴信の先鋒たる板垣信方と甘利虎泰への対応を自らの手で行うことを告げて来たのでありました。


私(村上義清)「板垣と甘利の強さはお前も重々承知しているであろう。」

真田幸隆「わかっております。ただ殿の考えを実現させるためには、誰かがやらなければならぬ役目。」

私(村上義清)「死ぬことになるかもしれぬぞ。」

真田幸隆「武士として生まれた以上それは覚悟の上。ただ私は死にませぬ。」

私(村上義清)「お前に考えがあると……。」

真田幸隆「はい。」


 しばらくの間、志賀のものを使いたいと申し出る真田幸隆。


私(村上義清)「ところで幸隆。」

真田幸隆「なんでしょうか。」

私(村上義清)「晴信と板垣の関係をどう見ていた?」

真田幸隆「一見しますと2代目当主を牛耳り、自らの欲望を実現させようとする先代からの宿老のように見えるかもしれません。」


 領土拡大を放棄した武田信虎を追放し、息子の晴信を当主に押し立て。諏訪、伊那、佐久へ武田晴信の名のもと。先頭に立ってやりたかったこと。戦さを続ける板垣信方。


真田幸隆「ただ晴信も板垣と同じ考えでありましたので、両者の間に諍いと言うものはありませんでした。」

私(村上義清)「板垣の力であれば、武田を乗っ取ることも不可能ではないからな……。」


 当時は下剋上の時代。


真田幸隆「板垣に大義となるものがないこともありますが、元々板垣には地盤がありますので、待遇に不満を感じていなかったこと。そして彼がやりたいことを実行するのに今の立ち位置でいるほうが便利であったかと。」

私(村上義清)「誰も反対出来るものはおらんからな。」

真田幸隆「仮にあったとしましても周りを黙らせるだけの実績を板垣は示し続けておりました。加えて占領地の統治と言う面倒くさい。誰もやりたがらないことを引き受け。そこで諏訪衆を手懐け。今では武田にとって必要不可欠な先鋒部隊にまで育て上げ、その指揮官に収まっています。」

私(村上義清)「誰も奴を止めることは出来ない。」

真田幸隆「はい。」

私(村上義清)「そんな危険な奴をお前は受け止めるのか……。」

真田幸隆「はい。」

私(村上義清)「各地を転戦し、鍛えに鍛え抜かれた諏訪衆を率いた板垣信方を。」

真田幸隆「はい。」

私(村上義清)「勝てる見込みがあって。」

真田幸隆「はい。」

私(村上義清)「あれだけ強い。」

真田幸隆「そこに私は賭けているのであります。」

私(村上義清)「ん!!?」

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