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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
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湯銭

私(村上義清)「ただの金喰い虫じゃねえかよ……。」

真田幸隆「(このままだと渓谷越えるなあいつ。)殿。」

私(村上義清)「まだあるか?」

真田幸隆「渓谷以西の維持に掛かる費用を当地で確保する方法が無いわけではありません。」

私(村上義清)「何だ?申してみよ。」

真田幸隆「それには条件が御座います。」

私(村上義清)「岩村田は渡したぞ。」

真田幸隆「いえ。これ以上殿の権益を奪い取ろうとしているわけではありません。ただ殿がまだ気付いていない宝が当地に眠っています。」

私(村上義清)「温泉か?」


 草津温泉の事。


真田幸隆「それも1つあります。」

私(村上義清)「湯銭の取り決めについて既に話が付いていることは(当地を治めている)湯本から聞いているぞ。全てお前のところに行くんだろ?」

真田幸隆「率は聞いていますか?」

私(村上義清)「教えてはくれなかった。」

真田幸隆「それは良かった。」

私(村上義清)「どう言う事だ?」

真田幸隆「利用料は皆知っているわけでありますから、もし湯本が率を漏らしてしまいますと今からの話が面倒な事になると思いまして。当初は私が当地を管理しようと考えていました。それは否定しません。ただ私が治めるとなりますと武田北条の動きを牽制する事は出来ません。そんな中、今回。殿が管理していただくことが出来る運びになりました。ただ兵を抱えるには経済基盤が脆弱であります。信濃からの持ち出しで賄うだけの理由を見出す事も出来ません。目的はあくまで抑止でありますので。何か現地で収入源となる物は無いか?となりました場合、真っ先に浮かんで来ますのが湯銭。入湯税であります。『全てを殿に。』とも思ったのではありますが。」

私(村上義清)「別にそれでも構わないと思うが。」

真田幸隆「私と湯本との関係があって成り立っていると言う事をお忘れなく。」

私(村上義清)「だよね。」

真田幸隆「草津については湯本に任せるべきであると考えています。そして入湯税の納め先を私のところにしていただきたい。そこから国庫。殿のところに納め、渓谷以西の開発運営費に充てていく。その流れを作りたいと考えています。」

私(村上義清)「草津の維持管理費用も俺のところから捻出するのか?」

真田幸隆「いえ。それには及びません。入湯税からは除外しています。湯本の手元に残るお金で執り行う事になります。それで殿に納めることになります税率はこれで。湯治客はこれだけでありますので、これぐらいの収入が見込まれます。湯治客数の確認はこちらが責任を持って行います。」

私(村上義清)「……わかった。それで湯本からお前のところに入って来る税収は?」

真田幸隆「仕入れ値を口外する商売人なんていないでしょう?」

私(村上義清)「……だね。」

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