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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
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見捨てた先に

真田幸隆「織田と松平が東濃と奥三河を。武田が諏訪を。そして今川は遠江をそれぞれが単独で攻め込んでいるうちはまだ良いのかもしれません。しかし今は戦国の世。何が起こるかわかりません。この時、織田と武田が手を結んだらどうなるでしょうか?織田と松平は同盟関係にありますし、武田と今川も同様であります。氏真にとって信長は仇でありますし、氏真にとって家康は裏切り者であります。ありますがそれ以上に大事なのはうちが簒奪に乗り出している遠江を取り戻すことであります。3者の利害は一致します。彼らの仲介の労を取る形で武田が合流し、4者が共同して攻め込んで来ましたら流石の我らも持ちません。その切っ掛けとなってしまうのが遠江の陥落であります。

 遠江は占領地に過ぎません。その権益を有効活用するところには辿り着いておりません。常に信濃からの補給が必要となりますし、各地から選りすぐりの兵と将を送り込まなければなりません。交代制を採用することになるのでありますが、それが出来るのはあくまで信濃が安定している時であります。信濃が不安定。それもこちらが不利な情勢にあった場合、交代要員を送り出すだけの余裕が無くなってしまいます。そうなりますと遠江滞在が長期化することになります。勿論遠江は占領地でありますので今川の攻勢を受け続けることになります。これに松平が加わる可能性もあります。両者が動くことは武田や織田が動くことも意味しています。

 遠江から深志の殿へ矢のような催促が送り付けられることになります。『何とかしてくれ!!』と……。しかしそれに応えることは出来ません。何故ならそれどころでは無いからであります。やがて兵糧も尽きましょう。和睦をして開城で終わるのであればまだ良いかもしれません。それでも彼らがうちに戻って来ることはありません。何故なら殿が行うべき約束。危機に陥ったら責任を持って彼らを救い出すことを守らなかったからであります。

 最も悲惨なのは、全滅の上、落城であります。殿に忠節を尽くしたにもかかわらず殿は彼らを見殺しにしてしまった。加えて彼らは信濃全土から集められた選りすぐりのものたちであります。そんな彼らを殿は見捨ててしまった。見捨てられたものたちを身内に持つものが信濃全土に居ます。殿の威信は地に落ちることになり、彼らは離反。織田に松平。今川に武田。更には上杉や北条など可能な伝手を頼ることになり、信濃全土がいくさの場に化すことになります。その時、殿のために働くものは居ますでしょうか?

 故に遠江を攻めるのでありましたら、そこで得た権益の全てを殿に差し上げます。我らの恩賞は殿が退いた深志から分割します。後始末は殿自らの手でお願いします。」

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