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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
南進

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皆兵

真田幸隆「まあまあまあ。どうどうどう。」

私(村上義清)「私は一応馬ではありません。」

真田幸隆「今殿がここを放り出されたとして、(今川領内で隠居となった)信虎のような受け皿が無いわけではありませんが、新天地で再興を目指すのは難しいでしょうね。」

私(村上義清)「(気を取り直して)さっき本願寺の兵は皆忠誠心抜群と言っただろう。」

真田幸隆「はい。」

私(村上義清)「彼らの強みは忠誠心だけでは無くてさ。」

真田幸隆「更なる強みと言いますと?」

私(村上義清)「兵となる担い手にこそ、彼らの力の源があって。うちの場合、最近でこそ専業の者が増えては来ているが、それでも臨時で雇われたものが多いのは事実。普段は田畑や荷役の仕事をしている者たちに報酬を支払う形で構成されているのが現状。」

真田幸隆「そうですね。」

私(村上義清)「それもあって、今回信長とのいくさで行った戦い方や、お前が得意としている特殊工作。用兵で以て相手を諦めさせる虎綱のような運用を大規模で行うことは不可能となっている。」

真田幸隆「下手をしますと、自分に危害を及ぼす危険も孕んでいますからね。」

私(村上義清)「一向宗はそうでは無いんだよ。専門の兵が居ないわけでは無いけれども少ない。これはうちと変わりはない。有事の際になった時、普段は田畑や漁。物流や商売で生計を立てているものたちが挑発されることになることも変わらない。変わりはないのだけれども異なることが1つある。それはどのようなことなのか?と言えば……。」


 全員が最新の兵器に習熟していると言う事。


私(村上義清)「本願寺は吉崎での成功をほかの地域でも適用することにより、北陸や畿内西部。更には紀伊や尾張。そして空誓が基盤を構えていた西三河にも進出。各地で成功を収めている。その豊かな経済力を使い、畿内で種子島と玉薬を大量に購入し、各拠点に分配。当地に住む門徒に訓練を施すことにより、各地で数万単位の兵をいつでも構成運用することが出来る体制を整えているそうな。」

真田幸隆「うちも出来ないことはありませんよ。」

私(村上義清)「直臣となったものには行ってはおる。ただ(木曾や仁科など)軍役から解放されることと引き換えに従っている連中に種子島を使わせるのは危険だろう。」

真田幸隆「そうですね。」

私(村上義清)「(話を戻して)彼らは普段。農業など本業に従事している。他所からの来訪者に対してもその顔で応対することになる。一向宗の寺の周辺は安全そのものである。ただそれには条件がある。条件は勿論。」


 一向宗との関係が良好であったなら。


私(村上義清)「ひとたび関係がこじれると、寺は勿論のこと。寺の周りに広がる町や田畑。更には船などから不意に襲い掛かられることになる。誰が敵なのかわからない。誰を倒せばいくさを終わらせることが出来るのかわからない戦いに巻き込まれることになる。しかも彼らは種子島に習熟している。」

真田幸隆「(少し考えて)……うちはやっています。」

私(村上義清)「そうなの?」

真田幸隆「だから気をつけてくださいね。」

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