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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
甲斐の虎

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自力救済の時代

 志賀城を攻略し佐久地方を平定した武田晴信。その勢いはとどまることを知らず。戦線を更に拡大することが必至な情勢。そうなると


私(村上義清)「次はうちだよな。」

真田幸隆「はい。」


 これが21世紀の現代でありましたら「弁護士にお願いする」や「110番」。あとはマスコミなどを用い情報発信を行うことにより「世論を味方につける」など第三者を入れることによって解決策を模索するのでありますが、この時代は……。


私(村上義清)「自分の力で取り除くしか無いんだよな……。」


 この時代は「力が正義」。とは言え戦国大名の中には自らの力を用いることにより、自分の領内における自力救済の禁止を模索するものも現れるのでありました。その1つが駿河の今川氏親が制定した「今川仮名目録」に登場する「喧嘩両成敗」。これはどちらが良い悪いかに関係なく喧嘩をした場合は双方とも「死罪に処す」と言うもの。


私(村上義清)「乱暴過ぎやしないか。」

真田幸隆「いえ。こうでも書かないと喧嘩に発展してしまいますので。これには続きがありまして。」


 喧嘩を仕掛けられても我慢をし、当主である今川に訴え出れば、たとえ喧嘩を売られた側に非があったとしても我慢した側の勝訴となります。


私(村上義清)「解釈によっては『たとえ悪さをしても、相手に喧嘩を売らせれば勝訴となる。』とも読み取ることも出来るような……。」

真田幸隆「要は『先にこっちに話をしてくれ。そうすれば悪いようにはしないから。』と言う事かと思われます。」

私(村上義清)「でも訴えられたら負けることがわかっているのであれば、訴えられる前に相手を暴発させる手段に打って出はしないか。」

真田幸隆「そう言うこと考える人が居るから条文が増えることになるんですよ。」


 当時は武器の所持が当たり前の時代。


私(村上義清)「隣の家の柿の枝がうちの庭にまで伸び、その枝からうちの庭に落ちた柿の実を食べただけで刃傷沙汰……。」


 21世紀の日本に生まれて良かった……。しかしこれはあくまで自領内での話。これが異なる勢力同士による係争事となりますと。


私(村上義清)「何も無いんだよな。これが……。」 

真田幸隆「一応、京の朝廷や幕府が間に入る仕組みになってはいましたが、京における大乱以降機能しておりません。仮に判決が下されたとしましてもそれを執行するのは自力ですからね……。」

私(村上義清)「最悪『賊軍』の札を貼りつけられたとしても、係争相手を倒してしまえば、『被疑者死亡のため悪人』の札を貼りつけ、改めて朝廷ないし幕府のお墨付きを取り付ければ逆転裁判が成立。」

真田幸隆「はい。しかし殿もそれで今の勢力になったのでしょう。」


 正しくは、先代の村上義清なんだけど……。

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