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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
南進

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七島

春日虎綱「津島の南に七島と言うところがあります。」


 七島は尾張と伊勢を分ける木曾長良揖斐の三河川が集まる河口付近に作られた輪中地帯で、伊勢桑名郡と言うものも居れば、尾張河内郡と称するものも居る境のはっきりしない場所。要は土砂が堆積し、新しく拓かれた場所。その土地を切り開いたのが……。


春日虎綱「願証寺。一向宗であります。」


 最初、8代宗主蓮如の六男蓮淳が住職となり、豊かな経済力を背景に地元の国人領主層に布教すると同時に傘下へ収めることにも成功。その勢いは衰えを知らず尾張伊勢の対岸にも進出。付近には数十にも及ぶ寺院並びに道場が建てられ、信徒は尾張美濃伊勢におよそ10万人。経済規模も実高10万石を誇る勢力に発展したのでありました。その間わずか60年。


春日虎綱「うちには今。空誓がいます。」


 空誓は三河における一向宗の根拠地であった本證寺の元住職で蓮如の曾孫。


春日虎綱「今は三河の物資の行き来を担っていただいているのでありますが、(一向宗と対立した)家康の手前。表立って行動をすることは出来ません。助言の域に留まっています。」

私(村上義清)「家康の影響が及ばない別の場所で、相手が一向宗ならば空誓と彼について来た門徒の力を発揮することが出来るようになる。と言う事か。」

春日虎綱「はい。」

私(村上義清)「そのためにも津島。更には七島に出入るすることが出来るようにしたい。」

春日虎綱「はい。」

私(村上義清)「七島ともやりとりが出来るようになれば、松平に織田。そして一向宗と3つの異なる出入り口を確保することが出来るようになる。と……。」

春日虎綱「はい。」

私(村上義清)「そうなると気になるのが……。」


 織田と願証寺の関係。


春日虎綱「これにつきましては難しいところがあります。先年。信長が今川義元を斃した時、一向宗は今川側についています。幸い短期間でいくさが終結したこともありましたので未遂に終わっています。もし織田と願証寺が事を構えてしまった場合、我々がどちらが側についたとしましても津島と七島の流域が同じであり、かつ我らの権益がその上流に位置している以上。使うことが出来なくなってしまうことは否定することは出来ません。」

私(村上義清)「その時のためにも熱田を使えるようにしておかないといけないな。」

春日虎綱「御意。」

私(村上義清)「もしそうなったら俺らの去就は難しくなるぞ。物の流れを止めないことを考えれば織田と松平に付かなければならなくなる。一方、そうすると空誓の顔を潰すことになってしまうし、うちの門徒の連中が七島に加勢してしまう恐れもある。今は問題になっては居ないが、両者の立地を見る限り、老舗の津島に挑む新興の七島。商売敵以外の何ものでもない。空誓のため、空誓について来た者ためと思う気持ちはわかるが、これまで通り助言に留めておいたほうが良いと思う。」

春日虎綱「そうですね。」

私(村上義清)「(七島と接触することについて)信長の理解は得られているのか?」

春日虎綱「(津島から七島へは)通り道になりますので、接触することについて禁止されることはありませんでした。」

私(村上義清)「あまり良い顔はしていないな?」

春日虎綱「否定することは出来ません。」

私(村上義清)「信長が勢力の拡大を目指している。それも武を以てとなれば、当然周りとの軋轢が生まれることになる。その種になりかねない場所に七島がある以上、今回は織田との繋がりを持つことが出来た。で善しにしてくれ。」

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