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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
南進

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守るに

 長篠の要害に居ても特にやることの無い村上義清は、地元住民の好意によりすぐ北の寺を宿舎にしたのでありました。


保科正俊「三河はわらじ型が一般的なんですね。」

住民「はい。保科様の地域(南信濃)では様々な形があるんですよね。」

保科正俊「団子に眼鏡。あとは波形なんてものもあるな。」

住民「そうなんですか。うちは形に変化はありませんが、このようなものがございます。」

保科正俊「へぇ。そんなものを売っているのですか?」

住民「はい。折角人が集まる市を開くのなら、何か名物になるものを。と考えまして……。ただ今はこのような状況(今川と松平。更には村上の抗争の舞台)になってしまっていますので……。」

保科正俊「これは申し訳ない。」

住民「いえいえ。村上様のような山のことがわかっているかたが来ていただけるのは有難いことと思っています。」

私(村上義清)「何の話をしているの?」

保科正俊「あっ!殿。ここではこのような(三尺を超える)五平餅を販売しているそうであります。」

私(村上義清)「一人前?」

住民「流石村上様。豪快でありますね。」

私(村上義清)「客の目を引くには最適だけど、仕込みが大変でしょう。」

住民「はい。それにすぐお出ししなければなりませんので、今日出る本数の見極めが大変であります。」

保科正俊「うちの地域でもやってみますか?」

私(村上義清)「白米を大食いする日なら……。それはそうと。ここに居て思うことが1つあるんだけど。」

保科正俊「何でしょうか?」

私(村上義清)「うちらが居る今の要害からここまでの間。……遮るものが何も無いな……。」

保科正俊「えぇ。行き来に不便を感じることはありません。」

私(村上義清)「仮に田峯から川を伝って下りた来たとしよう。」

保科正俊「はい。」

私(村上義清)「うちらは川の合流地点の要害に陣を構えることになるだろう?」

保科正俊「はい。」

私(村上義清)「そうなった時、敵が陣を構える場所って言ったら……ここ(医王寺)にならない?」

保科正俊「そうなりますね……。」

私(村上義清)「かと言ってここを守りの拠点とするには……。」

保科正俊「心許ないところがあります。」

私(村上義清)「そうだろ。こことあそこ(長篠の要害)の間はほぼ平地。むしろあっちの方が地は低い。」

保科正俊「しかも背後は川に遮られてしまっていますね。」

私(村上義清)「うちらの補給物資が送られてくるのは……。」

保科正俊「寺の北からであります。」

私(村上義清)「そこに火を付けられでもしようものなら。」


 尼ヶ淵の二の舞(第41話)。

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