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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
南進

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引き換え

 足助城を包囲して5日目。


村上国清「四郎。戦況のほうはどうだ?」

高遠勝頼「これはこれは村上様。」

村上国清「様づけは止めてくれ。同い年なんだから。」


 村上国清は村上義清の嫡男で今回の足助城攻めの総大将。


高遠勝頼「いえ。殿は殿であります故。見ての通りであります。」

村上国清「あとは時間が解決してくれるか……。」

高遠勝頼「そうなるかと思われます。ところで村上様?」

村上国清「だから様をつけるのは止めてくれ。」

高遠勝頼「そう遠くない未来そうなるのでありますから、今から慣れておいてください。」

村上国清「わかった。で。なんだ?」

高遠勝頼「本当に攻め落とすのでありますか?」

村上国清「そうなんだよな……。ここを灰燼に帰してしまうとなると四郎のところの人と物が止まってしまうことになってしまうからな……。」

高遠勝頼「その分、殿の方(千曲川)に回りますから潤うのではないのですか?」

村上国清「止めてくれ。これ以上増えてもらったら困る。とてもでは無いが捌くことは出来ぬ。」

高遠勝頼「これを機に船と人足を増やしてみては如何でしょう?」

村上国清「いづれここが復興すれば、荷物が減ることになるのは目に見えておる故それはせぬ。」

高遠勝頼「その時には配置転換でこちらに回していただければ宜しいかと。」

村上国清「転勤はするのもさせるのも大変だぞ。」

高遠勝頼「婿入りしてますのでその苦労はわかっています。」

村上国清「しかし助かっているな?」

高遠勝頼「春日様のことですか?」

村上国清「いつもあそこまで段取りしてくれる人が居ればどれだけ楽な事か……。」

高遠勝頼「真田様はそうでは無いと?」

村上国清「(幸隆は)攻めるのが好きだからな……。」

高遠勝頼「そうでしたね。」


 そこに伝令が……。


高遠勝頼「何と書いてあります?」

村上国清「『城主の切腹と引き換えに城兵の助命と足助領内の不犯を願う。』と記されておる。」

高遠勝頼「如何なされます?」

村上国清「父がおらぬからな……。」


 村上義清は足助攻めに参加せず。


高遠勝頼「真田様と春日様に相談しますか。」


 真田幸隆と春日虎綱が合流。


春日虎綱「城兵の助命と領内の不犯については問題無い。」

真田幸隆「そのままうちが使うことが出来ることになるだからな。」

春日虎綱「問題は城主をどうするか?」

真田幸隆「そうだな。」

春日虎綱「今後、松平とどう対処するかによって変わりますね。」

真田幸隆「松平領内にも鈴木のものがいるからな……。」


 寺部と酒呑に分家あり。


春日虎綱「殿なら城主を助命の上、足助をそのまま預けることになるのだが、如何せん周囲は我が勢力圏ではありません。」

真田幸隆「(本拠地の)深志に屋敷を与え、生活に困らないよう支援すると共に三河方面の仕事(主に調略活動)をお願いしてみようか?」

春日虎綱「殿は認めますかね?」

真田幸隆「先を急いでいる今の状況を考えれば、事後報告になっても仕方がない。殿(村上国清のこと)。それで宜しいでしょうか?」

村上国清「任せる。」

真田幸隆「ありがとうございます。」


 足助城に使者を送る村上国清。孤立無援。衆寡敵せず。あとは城を枕に討ち死にを待つばかりの覚悟を決めていた城内に驚きの声があがる中、和睦は成立。足助城に春日虎綱を残し、一行は東に向け兵を進めるのでありました。一方その頃村上義清は……。

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