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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
甲斐の虎

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税率40%でも名君と呼ばれた時代

「よそに比べ、うちの税率が低いからかな……。」


 河越の戦いで山内上杉ら関東の連合軍を破った北条氏康のお祖父さんであります北条早雲は、当時5割は当たり前。6割7割と言うところも存在しました税率を4割に設定。その噂を聞いた周辺の住民が

「うちも早く北条(早雲の時代は伊勢)の領地にならないかな。」

と言った待望論を沸き立たせることにより、その後の相模。氏綱の代に入ってからの武蔵への進出並びに統治を円滑なものにすることに成功した。と言われています。


 でも正直な話。4割でも高いですよね。しかもその4割は利益ではなく収入。

「うちは赤字ですから。」

と言い張って税を逃れることは許されません。売上からざっくり持って行かれることになります。今、大卒の初任給は幾らなのでしょうか。

(資料開いて……)

自分の頃(約20年前)と比べますと、増えてはいますけれども劇的には増えてはいないようであります。分かりやすく月収20万円としましょうか。そこから色々引かれまして『手取り』と言う形で振り込まれまして、やりくりしていくことになるのでありますが、その引かれる税率が北条早雲の40%としますと、8万円。国に吸い上げられることになります。月25日働いたと仮定しますと40%でありますので10日間はこの段階でタダ働きとなってしまったことが確定します。勿論、様々なサービスが提供される対価ではあります。直接的間接的な税金は他にもありますが、面倒臭いのでここでは無視しまして、15日分の金額であります12万円が振り込まれることになります。 

 この残りました12万円からまず『家賃』を払います。手取りの3分の1ぐらいには抑えたいとなりますと月4万円の部屋を探すことになります。東京で……。無いことはありませんが、頑張って探してくれている会社で調べて見ましても下手をしますと

「……お父さんお母さんよりも年配の建物に住むことになるかもしれません……。」


 残り8万円。次に通信費。携帯端末に掛かる金額を1万円とみまして残り7万円。水道光熱費も1万円で残りは6万。食費を2万に抑えて4万円。ここに追い打ちを掛けて来ることになりますのが

「奨学金の返済。」

返済期間は15年ぐらい。短いものですと3年から5年。月の返済額は1ないし2万円。……もっと多い額となるものもあります……。となりますと残りは2万円前後。通勤費用を会社が持ってくれたとしましても

(……正直、貯金するのはしんどいですよね……。)

せめて税率が20%でしたら16万円振り込まれることになりますのでこれでしたら……。

(……それでも家賃に消えてしまうのでしょうね。東京で暮らすとなりますと……。)


 話が何処かに行ってしまいました……。収入の4割を持って行かれるのもしんどいと思うのでありますが、それでも戦国時代の当時は、

「……これでも名君として崇め奉られたのでありました。」

 

 幸隆の話を信じればウチは3割。喜んでいただけるのは嬉しいのでありますが、だからと言って自分の住んでいた土地を離れてまで。とは思えないのでありますが……。

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